プロジェクト・ヘイル・メアリー : インタビュー
宇宙の果てが舞台の胸が熱くなる物語 映画も大ヒットが約束されている驚くべきベストセラー作家アンディ・ウィアー
ライアン・ゴズリング主演のSF超大作「プロジェクト・ヘイル・メアリー」が3月20日に日米同時公開される。公開を前に原作者のアンディ・ウィアーに話を聞いた。(取材・文/渡辺麻紀)
リドリー・スコットによる「オデッセイ」は全世界で6億3000万ドルを弾き出し、今週末公開されるフィル・ロード&クリストファー・ミラーの「プロジェクト・ヘイル・メアリー」は前評判が極めて高く好成績を収めるのは間違いない。
全米のボックスオフィスを騒がせるこの2本には共通点がある。原作小説がアンディ・ウィアーという米国のSF作家なのだ。「オデッセイ」(2015)は、たったひとり火星に取り残された宇宙飛行士が、あらゆる手をつかってサバイバルする物語。
「プロジェクト・ヘイル・メアリー」は、未知の宇宙生命体によって、再び氷河期に突入するだろう地球の自然と人類を救うため、中学校の科学教師(ライアン・ゴズリング)が宇宙の果てで出会ったエイリアンと手を取り合うという物語。
どちらも科学的事実をこれでもかと積み重ねてたハードSFにもかかわらず原作本はベストセラー、そしてその映画化も大ヒットが約束されているのだから、ある意味、驚くべき作家なのである。
「ヒットの最大の要因は素晴らしいフィルムメーカーと俳優の存在だと思います。主人公のグレースを演じてくれたライアン(・ゴズリング)は私たちのファーストチョイスでした。スタジオ・サイドが彼にまだゲラ状態の本を送ったら、すぐに気に入ってくれて出演してくれることになったんです。監督のフィル(・ロード)とクリス(・ミラー)もそう。今回、僕はプロデューサーとしても参加しているので、ぜひとも彼らにメガホンを取って欲しかった」
ゴズリングとふたりの監督が彼の原作を気に入ったのは、そのキャラクターの面白さ。グレースは、誰もいない宇宙の片隅で絶体絶命のピンチに陥りながら決して諦めず、頭を絞って解決策を導くとことんポジティブな性格。そのため映画自体も笑いが絶えず、驚くほど元気で明るいのだ。
「それは僕の性格を反映しています。僕、掛け値なしの楽観主義者なんです(笑)。それに、人間を信じている。人間は絶対、悪いところよりいいところのほうが多いと思っているし、追い詰められたときこそ本当に協力し助け合うと確信しているんです」
たとえSF度が濃厚であってもベストセラーになり大ヒットとなる理由はここにある。宇宙の果てを舞台にしつつ誰でも胸が熱くなる人間の物語が描かれているからだ。とりわけ本作ではグレースと、彼が“ロッキー”と名付けたエイリアンの関係性、強い絆が原作以上にクリアに描かれ、より胸に迫って来る。
「その変更、僕はとても気に入っているんです。なぜって、この物語の核心はまさにそこだから。フィルとクリスはそれをちゃんと理解してくれていたし、脚本家のドリュー(・ダーコ)もそう。ドリューは『オデッセイ』の脚色もやってくれて、あのときも見事だった。前作同様、僕は大満足しています」
基本、原作に忠実な映画化なのだが、もうひとつ映画ならではの変更がある。グレースの宇宙船、ヘイル・メアリー号の壁面に映し出される地球の映像だ。活きいきとした人々の姿、そして四季の移ろいをとらえた美しい自然。それらを見ながらグレースはロッキーに、絶対に守りたい地球の素晴らしさを伝えようとする。
「あの映像! 宇宙飛行士のメンタルヘルス的に必要とはいえ、僕の小説では一切触れてないんですよ(笑)。にもかかわらず映画版ではちゃんと映像化され、しかもとても重要な役目を果たしてくれている。見事だと思います」
ちなみに、フィル&クリスはウィアーの長編2作目、月面都市を舞台にした「アルテミス」の映画化を随分前から準備していたという。その前に3作目のこちらが実現したかたちだ。
「僕たちはずっと、深く静かに映画化に取り組んできたんです(笑)。映像化する上で最大の問題だった“月の重力の表現”がまさに解決されようとしているから、映画化される可能性が上がりました」
ウィアーがこれまで発表した長編は3冊。どれも宇宙を舞台にしたSFだ。「アルテミス」にゴーサインが出れば、すべての小説が映画化されることになる。そんな作家はそうはいない、それもハードSFで!
「宇宙が大好きなんです。子どもの頃から宇宙のことを考えるとワクワクしていました。だから、こうやって宇宙を舞台にしたSFを書き続けているんです」
好きなSF映画を訊ねると「『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』!」と即答してくれた。そのチョイスはやっぱり最強のスペースオペラだった。
