軸受(じくうけ、英:bearing)は、機械要素の一つで、回転や直線運動する相手部品に接して荷重を受け、軸などを支持する部品である。
英語のbearingをカタカナで表記したベアリングを使うことも一般的である。bearは「支える、になう」という意味で、bearingは支えるものという意味。
概要
[編集]軸を支え、回転運動や直線運動を許す機械要素[1]。摩擦抵抗や摩耗が少なく、強度が強いことが求められる[2]。また、回転振れを小さくするためには精度よく作られなければならない[2]。
分類
[編集]軸受の中で最もよく用いられるのはすべり軸受と転がり軸受である[1]。電磁力を利用して軸を支持する磁気軸受、超電導磁石のピン止め効果を用いた超電導磁気軸受も開発されている[1]。
構造からの分類
[編集]受ける荷重種類の分類
[編集]- ラジアル軸受:径方向の荷重を受ける。
- スラスト軸受:軸方向の荷重を受ける。
その他の特徴による呼び方
[編集]歴史
[編集]軸受の最古の実例としては、古代エジプトの絵に火起こしに軸受を使っている様子が描かれたものがある[3]。
復元された軸受の最古の例としては、共和政ローマ時代、ローマ皇帝カリグラ(在位37年 - 41年)が建造させたネミ湖のローマ船が紀元40年ごろに湖底の泥中に沈み、それが20世紀に発掘された時に出てきた、女神像を回転させるための回転テーブルの軸受け用の木製の玉がある[4][5]。
軸受は輪軸の固定にも使われる。この場合に使われるのはすべり軸受で、輪軸で物を引っ張る際に軸が回転する長さより摩擦する長さを短くすることで、摩擦を大幅に軽減させる。
レオナルド・ダ・ヴィンチは、ころ軸受の絵を1500年頃に描いており、これが世界初とされている。しかし、そのような軸受の絵を最初に出版したのはアゴスティーノ・ラメッリで、1588年に、ころ軸受とスラスト軸受の絵を掲載した本を出版している[6]。玉軸受には、玉同士が擦れあって追加の摩擦を生じるという問題があるが、それぞれの玉をかごに入れて互いに擦れないようにすれば問題を避けることができる。このような技法を採用した玉軸受は、1600年にガリレオが記述しているのが最初である。しかし、そのような玉軸受はその後も長年作ることができなかった。玉軸受用の玉を挟む輪(レース)の最初の特許は、1794年、カーマーゼンの Philip Vaughan が取得した。
世界初の実用的なころ軸受を発明したのは時計職人のジョン・ハリソンで、1740年代中頃にH3という時計を作ったときのことだった。このときは非常に限られた振動的な動きに対する軸受だったが、後にハリソンは完全に回転する軸を固定する軸受も作っている。
玉軸受に関する最初の特許は1869年8月3日、フランスの首都パリの自転車職人 Jules Suriray が取得したものとされている。この軸受は、1869年11月に行われた世界初の自転車ロードレース(Paris-Rouen)で優勝した James Moore が乗っていた自転車に使われた[7]。
フリードリヒ・フィッシャーは1883年、同じ大きさで真円のボールを製造できる機械を開発し、これが軸受製造の産業化に一役買うことになった。
19世紀の発明家 Henry Timken は1898年に円すいころ軸受の特許を取得した。翌年、その発明品を製造するための会社を起こした。その会社は Timken Company として軸受を中心とした各種製品を販売している。
現代的な自動調心式の玉軸受は、軸受製造企業SKFのスヴェン・ヴィンクヴィストが1907年に開発し、スウェーデンの特許第25406号を取得している。
Erich Franke は1934年、ワイヤレース式の転がり軸受(wire race bearing)を発明し、特許を取得した。彼は接触面積を可能な限り小さくすることに取り組み、それを軸受けを囲んでいる部分にまで適用した。第二次世界大戦後、彼はGerhard Heydrichと共にFranke & Heydrich KGという会社を創業した(現在の Franke GmbH)。
初期のすべり軸受と転がり軸受は木材で作られていたが、セラミックス、サファイア、ガラスなども使われる。最近では銅、青銅などの金属、セラミックス、プラスチック(例えば、ナイロン、ポリアセタール、ポリテトラフルオロエチレン、UHMWPE)などもよく使われる。腕時計などでは、軸受に複雑な機構を使えないため、合成コランダム(人造ルビーまたは人造サファイア)などの硬度が高い宝石(人工貴石)を使って磨耗を防いで精度を維持している。いわゆる「石数」は軸受としての宝石数を意味する。古い材質でも高い耐久性を示すことがある。例えば、古い水車では木製の軸受けが使われているが、水が冷却と潤滑の役目を果たすため、今も機能し続けている。
今日では、超高速回転用軸受が歯科用の機械で使われたり、航空宇宙用ベアリングがマーズ・エクスプロレーション・ローバーで使われたりするなど、軸受は様々な用途で使われている。
市場
[編集]2018年の世界出荷額を、日本経済新聞社は約4兆2600億円と推計している。企業別シェアは首位のSKF(スウェーデン)が16.5%、2位のシェフラー(ドイツ)が15.6%。3 - 5位は日本企業が占め、日本精工、NTN、ジェイテクトで世界市場の4割近くを占める[8]。
メーカー
[編集]脚注
[編集]- 1 2 3 吉本成香・下田博一 ・野口昭治・岩附信行・清水茂夫 2017, p.131.
- 1 2 3 4 吉本成香・下田博一 ・野口昭治・岩附信行・清水茂夫 2017, p.132.
- ↑ Guran,Ardéshir;Rand,Richard H.(1997),Nonlinear dynamics,World Scientific,p.178,ISBN978-981-02-2982-5,https://books.google.co.jp/books?id=ttBQ1k8MYZ4C&pg=PA178&lpg=PA178&redir_esc=y&hl=ja.
- ↑ Purtell, John (1999/2001). Project Diana, chapter 10:
- ↑ Bearing Industry Timeline - ウェイバックマシン(2009年4月1日アーカイブ分)
- ↑ American Society of Mechanical Engineers(1906),Transactions of the American Society of Mechanical Engineers,27,American Society of Mechanical Engineers,p.441.
- ↑ Bicycle History, Chronology of the Growth of Bicycling and the Development of Bicycle Technology by David Mozer
- ↑ 【点検 世界シェア】ベアリング/日本勢、通商摩擦で伸び悩み『日経産業新聞』2019年7月22日(自動車・機械面)。
- ↑ 業界再編の動向・ベアリング
参考文献
[編集]- 吉本成香・下田博一 ・野口昭治・岩附信行・清水茂夫『機械設計 -機械の要素とシステムの設計-』オーム社、2017年11月30日。
