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イギー・ポップ「アメリカン・ヴァルハラ」公開記念! 髭・須藤&斉藤が語る、70歳のロックスターが頂点であり続ける理由

「アメリカン・ヴァルハラ」
インタヴュー・文
TAISHI IWAMI
写真(髭)
Kana Tarumi
2018年04月13日
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(左から)斉藤祐樹、須藤寿

イギ―・ポップの最新アルバム『Post Pop Depression』(2016年)を巡るドキュメンタリー映画「アメリカン・ヴァルハラ」が、明日4月14日(土)より東京・新宿シネマカリテで公開となる。

『Post Pop Depression』は、イギーからの熱烈オファーを受けてクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジのフロントマン、ジョシュ・ホーミが全面プロデュース。自身最後のアルバムだとも噂される同作は、デヴィッド・ボウイがプロデュースを手掛けたイギーの2作『The Idiot』『Lust For Life』(共に77年)を手本としたといい、イギーのソロ作としては最大のヒットを記録した。齢70近くの孤高のカルト・ヒーローが年少のロック・スターを迎え、老いと向き合いながら作り上げた、前述の二作にも通じる大傑作となっている(アルバムについてはMikikiでリリース時に特集しており、ロング・レヴューも掲載しているのでぜひご参照いただきたい)。

そして「アメリカン・ヴァルハラ」は、外部から遮断された米・モハベ砂漠のど真ん中のハウス・スタジオで最小の人数で内密におこなわれたアルバムの貴重な制作風景から、アルバムのリリース・ツアーを追っている。登場人物はイギーとジョシュを軸に、アルバムのレコーディング・メンバーであるディーン・フェルティタ(クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ/デッド・ウェザー)とマット・ヘルダーズ(アークティック・モンキーズ)の4人で主に進行していく。彼らのファンならずとも音楽ファンにはうってつけの音楽ドキュメンタリーだが、本作は2人の男が年齢を越えて信頼し合い、心を通わせていく友情の物語として観ることもできる、ひとつの優れた映画作品としての魅力も持っている。

今回は映画の公開記念に、ロック・バンドの髭から須藤寿(ヴォーカル)と斉藤祐樹(ギター)を迎えて、映画の観どころはもちろん、“イギー・ポップによろしく”という楽曲を発表するほどに敬愛するイギー・ポップと、音楽性としてはよりシンパシーを感じるというストゥージズへの想いを明かしてもらった。特にイギーと同じくフロントマンの須藤はイギー・ポップの大ファンだそうだが、言われてみれば確かに、両者の持つチャーミングな魅力は似ているような気がする。今年でちょうどデビュー15周年を迎えた髭の2人が老いてなお輝くロック界の偉人に見る、ミュージシャンの在り方を訊いた。 *Mikiki編集部

共感するのは〈ミュージシャンじゃない〉ところ

――まずは「アメリカン・ヴァルハラ」をご覧になられて、いかがでした?

須藤寿(ヴォーカル、ギター)「イギー・ポップが大好きだからここにいるし、映画にももちろん興味があったんですけど、インタヴューが前提となると、〈観なきゃいけない〉って構えちゃう部分もあって。でも、いざ始まったらあっと言う間でした。めちゃくちゃおもしろかったです! イギー・ポップが自分についてこんなに誠実に話している映像も僕は初めて観ましたし」

斉藤祐樹(ギター)「僕は正直に言うと『Post Pop Depression』にそんなにピンときてなかったんです。でも観終ってから改めて聴いたら〈すげえいい!〉ってなりました」

――イギー・ポップ最後のアルバムとも言われている作品ですが、どういったところが魅力的でしたか?

斉藤「曲のスケールが大きいのと、ビートがいなたくてクール。アルバム通してどこか荘厳な感じがあるのも魅力を後伸びさせた部分かなと。映画を観たあとに寝ながら聴いた時に気付いたのはイギーの声が意外とベッドルームにも合うなと」

――映画を観る前と後で印象が変わったのはなぜでしょう?

斉藤「ピンとこなかったのは、作品自体の良し悪しというより僕自身の感性の問題ですね。振り返ってみると、イギー・ポップやデヴィッド・ボウイもそうなんですけど、初めて聴いた時はよくわからなかった音楽ってけっこうあって。しばらく経ってからその魅力に気付いたり、何かきっかけがあって凄く好きになったり、自分はそういうタイプなんです」

――『アメリカン・ヴァルハラ』はその引き金になったと。

斉藤「そうですね。〈ドキュメント〉というところに焦点を絞ってコンパクトに作られているから、ブレがないというか。アルバムを聴いている感覚と近い距離感で観られるからか、観終ったあとにもう1回アルバムを聴いてみたくなる。で、映画の内容を回想してまた聴き返す……みたいなループで何度も聴いてしまいましたね」

『Post Pop Depression』収録曲“Sunday”

――そもそもお二人がイギー・ポップと出会ったのは、いつ頃ですか?

須藤「僕も斉藤くんも90年代に10代を過ごしたから、オンタイムの〈パンク〉はニルヴァーナでした。で、彼らもイギーのことはリスペクトしていましたけど、僕の場合は最初にカート・コバーンがセックス・ピストルズのことを好きだという情報が入ってきて、それで70年代のパンクにハマったんですね。ピストルズからダムド、デッド・ケネディーズとかを聴いていって」

――その70年代の音楽から、60年代のストゥージズへ遡っていった感じですか?

須藤「いや、ちょっと違うんです。イギー・ポップという存在自体はニルヴァーナに出会ったくらいの頃から知ってましたし、ストゥージズの“I Wanna Be Your Dog”(69年作『The Stooges』収録)とかもどこかで聴いていたので、自分のなかになんとなくはあって。そこからイギー・ポップのことを好きになった決定的な瞬間は『トレインスポッティング』(96年)でした。劇中で流れていた“Lust For Life”を聴いて、〈この人がイギー・ポップか〉〈あ、あの“I Wanna Be Your Dog”の人と同じなんだ。すげえかっこいい!〉って、すべてが繋がりましたね」

“Lust For Life”(イギーの77年作『Lust For Life』収録)がかかる「トレインスポッティング」の有名なオープニング・シーン

――私も須藤さんと同じ世代なので、わかる気がします。イギー・ポップってその語感もあると思うんですけど、まずそれだけで勇気が出る〈ロックなワード〉みたいな感じで頭の中にはあったけど、そのイメージばかりが先行して何者かはよく知らなかった(笑)。で、調べてみると作品がいっぱいあって、どこから手を付けていいかわからない。僕も実際にハマったのはその少し後でした。

須藤「あー、そんな感じです。僕の場合、そのハマったきっかけが『トレインスポッティング』の“Lust For Life”だった。で、ずっとピストルズの曲だと思ってた“No Fun”もストゥージズの曲だと知ったり(69年作『The Stooges』収録)、ソニック・ユースやいろんなアーティストも彼の曲をカヴァーしていたことがわかって、〈みんなリスペクトしてるんだ〉って、納得しました」

斉藤「僕も須藤と同じで、『トレインスポッティング』のオープ二ングで“Lust For Life”を聴いたのがきっかけです。あとは、ジム・ジャームッシュ監督の『コーヒー&シガレッツ』(2003年)も大きかったですね。イギーはトム・ウェイツと出演していましたけど、〈やっぱりこの人おもしろいなあ〉って思いました。『コーヒー&シガレッツ』の最後にイギーが(キングスメンを)カヴァーした“Louie Louie”が流れるんですけど、それもまたすごく良くて、〈この人の音楽はもっとちゃんと聴かなきゃダメだ〉って思いましたね。映像で流れてくるイギーの曲ってひときわかっこいいんですよ。曲がいいとか悪いとかを超えてるというか、ビートはシンプルで、サウンドとメッセージがやたらデカく聴こえてくる」

「コーヒー&シガレッツ」トレイラー。11篇の物語からなるオムニバス映画で、イギーはトム・ウェイツと二人で〈カリフォルニアのどこかで〉に出演

――イギーは「コーヒー&シガレッツ」以外にもちょこちょこ映画出演をしていますが、スクリーン上でも光る魅力のある人ですよね。須藤さんはイギー・ポップのファンだと聞いていますが、『アメリカン・ヴァルハラ』を観て、改めて感じたイギー・ポップの魅力などはありますか?

須藤「たくさんありましたけど、今回もっともシンパシーを受けたのは、彼がパートナーに指名したジョシュ・ホーミをミュージシャンとしては自分より上だと認めている節があったことですね」

――アルバムのプロデュースをしてほしいという熱烈なアプローチや、彼に向けてイギーが発する言葉の端々に、それは感じられましたよね。

須藤「イギーはきっと音楽というツールが傍にあっただけで、ミュージシャンじゃないというか、個の表現者としてそびえ立っているような感じがしたんです。そこに共感しましたね」

――〈ミュージシャンじゃない〉?

須藤「もちろん、イギーも僕も斉藤くんもミュージシャンなんですけど(笑)、ミュージシャンってもっと〈ミュージシャン〉というか。音楽じゃなきゃダメな人っているじゃないですか? そういう意味では、どちらかというとジョシュは音楽じゃなきゃダメな人というか、音楽との阿吽の呼吸が成立している人だなと」

斉藤「ジョシュは表現したいことをすべて音楽でこなせるタイプだよね」

ジョシュ率いるクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジの2017年作『Villains』収録曲“Head Like a Haunted House”

須藤「そんな彼にイギーは〈オレのことを料理してくれ〉って、信頼しているからこそ簡単にイニシアチヴを渡すんです。ここで言う〈ミュージシャン〉としての勝ち負けじゃない。認めてるんです、人のことを。それが何だか凄く嬉しかったですね」

斉藤「嘘を付かない人だよね。〈俺のヴォーカルのせいで迷惑をかけちまった〉とか、素直に言っちゃうし。元々大ファンだったジョシュからしたら大先輩だし凄い人なんですけど、それを感じさせないことも才能だと思うんです。愛嬌があって、可愛らしくすら見えるからこそ、強さを感じるんですよね」

須藤「自宅のハンモックに寝ながらインタヴューに答えてるのも可愛かったね。チャーミング!」

斉藤「〈あ、今鼻クソ舐めたぞ〉って場面とかも、可愛いよね。でもあれは素なのか、撮られてるからやってるのか」

須藤「あれは撮られてるからでしょ(笑)」

――鼻クソを舐めたりとか(笑)、どんなに過激なパフォーマンスをしてもイギーはどこか品が感じられるのも不思議です。ちなみに、ジョシュは首を縦に振るまで少し時間を要したわけですが、ご自身がジョシュの立場だとして、大ファンである先輩ミュージシャンからラヴコールを受けたらどうしますか?

須藤「受けますよ!」

斉藤「それはもうやるだけやる、かなと」

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