航続距離拡大・充電時間短縮に課題…電動商用車、普及への道はどこだ
荷室を「モバイルオフィス」に
国内商用車各社が電動車の普及に力を注いでいる。世界的な脱炭素化の潮流で電気自動車(EV)は一つの手段になり得るが、顧客の稼働を止めないことが大前提の商用車にとって、航続距離や充電時間の長さは重要なポイントだ。また顧客にとっては車両購入が設備投資にあたるため、内燃機関車に比べ高い値段も課題となる。車両そのものだけでなく、運用の仕方、使われ方にも着目し、課題解決に近づける各社の事例を追った。(大原佑美子)
国土交通省によると、2023年度の日本の二酸化炭素(CO2)排出量9億8900万トンのうち、運輸部門の排出量は1億9014万トンで19・2%を占める。運輸部門の85・7%を自動車が占め、うち旅客自動車は47・4%、貨物自動車が38・3%を排出している。
排出量削減の手段の一つにEVトラックがある。乗用車に比べ大容量の電池が積まれ、長くかかる充電時間が業務のダウンタイムにつながるほか長距離トラックでは電欠不安もある。
こうした課題に日野自動車が一つの解を示す。同社は国内初の量産モデルとなる燃料電池(FC)大型トラック「日野プロフィアZ FCV」を24日に発売する。航続距離を650キロメートル確保し、水素充填時間は15―30分と、幹線輸送に向く仕様とした。共同開発したトヨタ自動車CVカンパニーCV統括部製品企画ZMの福永恒太郎主査は「FCVは特別な技術が搭載されているが決して特別な乗り物ではない」と、使い勝手を訴求し普及を促す。
充電課題の解決に向けてはいすゞ自動車、三菱ふそうトラック・バスも取り組む。いすゞは伊藤忠商事、ファミリーマートと共同で、車両の左右両側から電池を同時交換できるステーションと、対応した電池交換式の小型EVトラック「エルフEV」で、ファミマ約80店舗に商品配送する実証実験を、11月に横浜市で始める。車両と電池を切り離し、今回の実証車両では7分程度と短時間で満充電の電池に交換できるため、車両のダウンタイムを大幅に減らせる。
三菱ふそうトラック・バスも、三菱自動車、米アンプル、ヤマト運輸の4社合同で、三菱ふそうの電池交換式EV小型トラック「eキャンター」などEV車両と交換ステーションの、物流業務における実用性を確かめる実証を東京都で行う。またダイヘンや三菱総合研究所と共同で、同トラックを用いた停車中ワイヤレス充電の実証試験を計画。実用化が叶えば従来の充電設備に比べ柔軟な充電スペースの計画が可能になるほか充電ケーブル脱着の手間が省けるといった利便性向上にもつながる。
一方、さまざまな架装に対応してきた強みを生かし、車両の使い方の提案で電動車の普及を促す動きもある。日野自はEV小型トラック「デュトロZ EV」の超低床構造を生かし、法人向けに「モバイルオフィス」を提案する。居室をストレスなく移動できる室内高を備え、エアコン、モニターなど必要な電化製品に車載電池の電力を供給できる。災害時の現場管制室やイベント時の事務局などの使用を想定。同車両を用いて可動式トイレや店舗、診療所などあらゆる可能性を探る。
業界関係者は「(補助金などを活用し)新たな技術、サービスの実証実験は多く行われるが社会実装されるものは少ない」と指摘する。“出口”戦略まで見据えた開発が電動車普及の近道となりそうだ。
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