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2.1 重ね合わせの原理と波束
波束としての粒子
よく知られているように,原子のようなミクロな対象は粒子としての性質と波動としての性質とをあわせ持っている.
まず粒子と波動とを結びつけるため、空間内のある限られた領域にだけ局在しているような波を考える.
この波ははじめは空間内のある限られた領域にだけ局在しているが,この波の塊は時間がたつにつれてはじめの位置からどんどん遠ざかっていく.
この時間とともに移動していく波の塊のことを波束と呼ぶ.
波数$k$の1次元の波は$e^{i(kx-\omega t)}$で表すことができるが,波束は異なる波数$k$をもつ波に適当な重みをかけて,ある部分では干渉し合って強め合い,ある部分では干渉し合って弱め合うような波の重ねあわせとして表現できる.
ここで$x$方向に進む波束を考える.
求める解を$\psi\left(x,t\right)$とすると,重み$g\left(k\right)$を使って,
(2.1)において$t=0$とおくと,
(2.3)に代入すれば$g(k)$が決まり,その$g(k)$を(2.1)に代入すると任意の時刻$t$に対する波動関数が決まる.
さて,ここからは空間に局在する波として計算に便利な形のものを導入する.たとえば
(2.4)より,$|\psi(x,0)|^2=A^2e^{-\frac{x^2}{\Delta^2}}$は$x=0$に極大があり,$x=\pm\Delta$で$1/e$に減少する.
したがって(2.4)の波は原点を中心に局在する波と言える.
(2.4)を(2.3)に代入すると,
波束の時間発展と波動方程式
(2.7)の$g(k)$を(2.1)に代入すれば,任意の時刻$t$における波束が決まる.
さてここで,真空中における光波の伝播について考えることにする.
光速を$c$とすると,$\omega = 2\pi\nu = 2\pi\frac{c}{\lambda} = kc$となるので
(2.9)は(2.2)において$x$を$x-ct$に置き換えたものと同じ形をしている.(2.2)では波束は$x=0$に局在していたから,(2.9)においては波束は$x-ct=0$の位置に局在していることになる.したがって光波の波束は分散することなくそのままの形を保ったまま光速$c$で伝播する.しかし今やりたいことは粒子の運動を記述する波束を探すことなので,真空中を伝播する光波と同じく$\omega =kc$であるとは限らない.$\omega$は光波以外の一般の波束の場合には波数$k$の関数で$\omega=\omega(k)$である.そこで$\psi(x,t)$が自由に運動する古典粒子を表すとして$\omega(k)$の形を決めることにする.
計算を簡単にするために、$k\simeq k_0$に鋭く局在する波束を考える.
これは(2.7)において$\Delta$が大きい場合に対応している.
$\omega(k)$を$k_0$の周りに2次の項まで展開すると,
(2.7)の$g(k)$と(2.10)を(2.1)に代入し,
\begin{eqnarray}
k^\prime &\equiv& k-k_0
\\
v_g &\equiv& {\left(\frac{d \omega}{dk} \right)}_{k_0}
\\
\xi &\equiv& {\frac{1}{2}\left(\frac{d^2\omega}{dk^2}\right)}_{k_o}
\end{eqnarray}
とおくと,
(2.11)において波束の重心の速度であると考える.波束の速度を群速度と呼び,それは$v_g$にあたる.
(2.11)の絶対値の2乗をとると,
(2.12)は波束の重心が速度$v_g$で進んでいることを表している.さらに波束の空間的な拡がりは一定値を保っておらず,時刻$t=0$で$\Delta$であったのが,
\Delta \sqrt{1+\left( \frac{2\xi}{\Delta^2} \right)^2t^2}
に拡がる.言い換えると,波束は次第に拡散してぼんやりしていく.そして波束が拡散してぼやける速さははじめの波束の幅$\Delta$が小さいほど大きい.はじめから波束が空間的に広く広がっていればぼやける速さは遅くなる.
さて,波束(2.11)の重心が自由に運動する古典粒子のように運動することを要求してみる.この古典粒子の運動量を$p$,運動エネルギー$E=\frac{p^2}{2m}$とすると,速度は$v=\frac{dE}{dp}=\frac{p}{m}$であり,これが波束の群速度に対応することになるので,
(2.14)より,
\frac{p}{m}
=\frac{d\omega}{dk}
=\frac{d}{dk}\left(\frac{p^2}{2m\hbar}\right)
=\frac{p}{m\hbar}\frac{dp}{dk},
\\
\therefore \frac{dp}{dk} = \hbar
したがって,
(2.13)と(2.15)が同時に成り立つことになる.
(2.16)はde Broglieの関係式である.
(2.15)と(2.16)より(2.10)の$\omega(k)$の形が
\omega(k)=\frac{(\hbar k)^2}{2m\hbar}=\frac{\hbar k^2}{2m}
であることがわかる.
今考えている波束(2.1)を$p$を使って書き換えると,(2.14)と(2.16)を用いて,
g\left(\frac{p}{\hbar}\right)=\sqrt{\hbar}\tilde{\varphi}(p)
とおくと,
(2.18)より
\varphi(x)
=
\frac{1}{\sqrt{2\pi\hbar}}
\int_{-\infty}^{\infty}
\tilde{\varphi} ( p )
e^{\frac{ipx}{\hbar}}
dp
となり,これはFourier逆変換
\tilde{\varphi} ( p )
=
\frac{1}{\sqrt{2\pi\hbar}}
\int_{-\infty}^{\infty}
\varphi ( p )
e^{-\frac{ipx}{\hbar}}
dx
によって$\tilde{\varphi} ( p )$と結ばれている.
さて,ここで(2.18)を時間$t$で微分すると,
(2.18)を$x$で2階偏微分すると,
(2.21)をよくみると,
i\hbar \frac{\partial}{\partial t}
=
-\frac{\hbar^2}{2m}
\frac{\partial^2}{\partial x^2}
である.
ここでエネルギーと運動量について,古典力学では$E=\frac{p^2}{2m}$であるが,
不確定性関係
2.1.1 波束としての粒子で議論したように,$|\psi(x,0)|^2$は$x=0$で極大となり$x=\pm\Delta$で$1/e$に減衰する.いっぽう$|g(k)|^2$は$k=k_0$で極大となり$k=k_0\pm 1/\Delta$で$1/e$に減衰する.したがって$x$は$\Delta$程度の幅を,$k$は$1/\Delta$程度の幅をもっているので,
(2.23)の両辺に$\hbar$をかけてde Broglieの関係式(2.16)を用いると,
(2.25)をHeisenbergの不確定性関係と呼ぶ.
3次元への拡張
これまでは1次元での波束を取り扱ってきたが,これまでの議論を3次元に拡張する.$\mathbf{r}$を粒子の位置ベクトル$(x,y,z)$,$\mathbf{k}$を波数ベクトル$(k_x,k_y,k_z)$とすれば,(2.2)は,
(2.18)を3次元に拡張すると,
(2.29)を時間$t$で偏微分すると,
(2.29)を$x$で2階偏微分すると,
(2.29.2),(2.29.3)、(2.29.4)を加えると,自由に運動する粒子の場合$E=\frac{{p_x}^2}{2m}+\frac{{p_y}^2}{2m}+\frac{{p_z}^2}{2m}$であることに注意して,
(2.22)と同様に3次元の場合には,古典論での
(2.25)と同様に,3次元の場合の不確定性関係は,
2.2 Schrödingerの波動方程式
波動方程式のみたすべき条件
前節では波束が1個の自由に運動する粒子を表すことを要求して(2.30)のSchrödingerの波動方程式を推測した.
この波動方程式は以下の重要な性質をもつ.
1.波動関数$\psi$に関して線型すなわち重ね合わせの原理をみたす.
2.時刻$t$に関して1階の偏微分方程式で,$t=0$における波動関数の値を与えれば任意の時刻$t$での波動関数が求められる.
そこでポテンシャルエネルギー$V(r)$が存在する一般の場合にもこれらの性質を波動方程式がみたすことを要求してみる.
ポテンシャルがあるときのSchrödinger方程式
上の性質1.2.を満たす波動方程式の一般的な形は,
(2.30)のSchrödinger方程式は,古典的な自由粒子のハミルトニアン
(2.32)に従って置き換え,波動関数$\psi(\mathbf{r},t)$に作用させて得られる.
ポテンシャル$V(r)$の中に置かれた古典粒子のハミルトニアンは,
(2.32)に従って置き換えると,
(2.34)の$H$は,
2.3 波動関数とBornの確率解釈
Bornの確率解釈
Bornは波動関数について次のような物理的意味付けをした。
波動関数$\psi(\mathbf{r},t)$で表される状態において時刻$t$に電子の位置を測定した時,位置$\mathbf{r}$を含む$d^3r$内に電子が見出される確率は,
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