〈優等生〉だから白鳥は踊れるけど、〈不良〉の黒鳥(ブラック・スワン)は踊れない! でも、プリマドンナはどちらも踊れないといけないの。私、優等生の殻を脱ぎ捨てて、不良になって黒鳥を踊りきって見せるわ、という映画である。優等生のイメージからの脱出を図る映画のヒロインが、役者ナタリー・ポートマンそのものとダブって見えるところがミソである。『π』『レスラー』の監督ダーレン・アロノフスキーは〈、私〉という〈牢獄〉を、具体的かつ直裁的な画として提示する。この映画で頻出する鏡のイメージやヒロインの周囲の女性がみなヒロインの分身であるようにみえる設定は、牢獄の〈外部〉が存在しえないことを雄弁に暴き立てる。ヒロインが脱出した先にあるものは本編で確認して頂きたいが、役者ナタリー・ポートマンはアカデミー賞主演女優賞他映画賞を総なめにし、見事優等生というイメージからの脱出に成功したことは言うまでもないだろう。
intoxicate (C)高野直人
タワーレコード(vol.93(2011年8月20日発行号)掲載)