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⇱ アナ『HOLE』 - OTOTOY


2011/04/28 00:00

2010年の暮れ。ひさしぶりにアナのライヴを観て、その変貌ぶりにずいぶん驚かされた。抜群のショー・マン・シップがありながらも線の細い印象があった彼らのサウンドが、実にたくましく成長し、よりバンドらしい骨太さを身に付けていたのだ。次の作品は素晴らしいものになる。そのとき、そんな予感がしたのを覚えている。

地元・福岡からの上京、京都のインディー・レーベルであるSecond Royal Recordsへの移籍など、この3年はアナにとって正念場だったに違いない。しかし、彼らは自分たちの手でさまざまな決断をし、目の覚めるような会心のポップ・アルバム『HOLE』を完成させた。制作においてもこれまでにないチャレンジが盛り込まれたこの意欲作、そして第2期アナに到達するまでのバンドの紆余曲折について、彼らに話を聞いた。

インタビュー&文 : 田山雄士

「TEI」のフリー・ダウンロードはこちら(期間 : 4/28〜5/4)

アナ / HOLE
サンプリング・ミュージックからの発展を遂げたダンサブルなサウンド・アレンジ、センチメントな唄心、真っ直ぐ染み入る歌詞、そしてカラフルなハーモニーがこれでもか! と押し寄せる。踊れるのに切ない、珠玉のエレクトロニック・ポップ・ミュージックが誕生。

1. TEI / 2. SUMMERS / 3. 夜は幻 / 4. 経て / 5. ノルウェイのあれ / 6. ZOMBIE / 7. ランデブー / 8. ROMANTIC / 9. PLANET

☆アルバム購入者にはボーナス・トラック「アナのテーマ」をプレゼント!

インディー・レーベルだろうが、スタジアム感は忘れたくない

——新作の『HOLE』は、本当に待った甲斐のある作品になったと思います。

全員 : ありがとうございます!

——前作『FLASH』から3年以上空いてのリリースということで、その間のお話をまず聞かせて下さい。

大久保潤也(以下、大久保) : 『FLASH』はかなり自信のある作品だったのに、正直自分たちが思ってたほどの反応はなかったんですよね。力を出し切ったのもあったし、サウンドにしても曲作りの仕方にしても、次は何かを変えたかった。それで試行錯誤をしながら、当時のレコード会社の要望も聞いたりして。

——具体的には?

大内篤(以下、大内) : ま、売れるものですよね。
大久保 : デビュー当時から、BPMが遅いっていうのはずっと言われてました(笑)。そのときはニュー・レイヴのようなバキバキしたものが流行ってたし、相当速い曲にも挑戦しましたよ。
大内 : でも、だいぶ無理がありました。歌詞の世界観ともだいぶギャップがあるし。そうこうしてるうちにレーベルが不況でなくなっちゃって。

——それはいつ頃ですか?

大内 : 『FLASH』出した年(2007年)の終わりくらいかな。
大久保 : レーベルがなくなっても事務所はあったから、自主制作を出したくても出せない宙ぶらりんな状態でした。

——そんな中、福岡から上京したんですよね?

大内 : そうですね。2008年の10月に。

——上京した一番の理由って何ですか?

大久保 : 環境を変えたかったんです。詞とかを作る面でも新しいところに行きたかった。歌詞は実体験やすごくリアルなことを書くので。

——大内さんとNOMAさんは東京に出ることに関してはどうでした?

NOMA : 福岡にいるときはずっと同じ環境でしたからね。新しいものって考えたときに、東京は情報量にしても生活のスピードにしても福岡とは違うし、僕もいいなって思いました。
大内 : 僕は最後まで断固反対してました。福岡の街が単純に好きだったし、ライヴでしょっちゅう東京には行ってても、それで東京が好きになることもなかったから。ま、でもバンド内的には2対1なので(笑)。

——上京したばかりの頃はどうでした?

大久保 : 普通にライヴはやりつつも、最初の1年くらいはまいってましたね。1人は完全に出てきたくなくて出てきてるし。
大内 : 気持ちは切り替えてたつもりでも、東京に来てからも福岡っていうのを全面に出してたかな。「東京サイコー」みたいに素直になれなくて。
大久保 : 知り合いもそんなにいなかったし、なるべく多くの場所に顔を出したり、遊びに行ったりするようにしました。福岡では普通にやってるだけでいろいろなジャンルの人ともつながりやすかったけど、東京は難しいですね。どこが自分たちとつながるのかもわからない。

——Second Royal Recordsに所属するきっかけは?

大久保 : 接点自体は昔からあって、福岡にSecond Royal Recordsのメンツを呼んでイベントやったり、Rufusのレコ発ツアーに参加したりしてました。影響を受けた90年代の音楽が共通してたから、Second Royal Recordsの人たちとは仲がよかった。で、東京に来てから、僕は彼らが月1回新宿でやってるDJイベントに遊びに行くようになって。

——新作はそのRufusの上田修平さんがプロデューサーですね。

大久保 : 2010年の4月に事務所との契約が終わって、自主制作で出そうとしてたんです。で、新作はプロデューサーを入れてみたかった。そんなときに彼がプロデュースしたTurntable Filmsのファーストを聴いたらすごくよかったので、すぐに電話でお願いしました。それで状況を説明したら、「じゃあ、Second Royal Recordsから出そうよ」って話を通してくれて。

——自主で出すより、レーベルに所属したかった?

大久保 : はい。90年代の渋谷系で言うと、トラットリアやLB Nationのああいうつるんでる感じに憧れがあるんですよね。

——Second Royal Recordsには個性が強くて、面白いバンドがたくさんいますよね。

大久保 : レーベル内のアーティストは大好きですね。「TEI」という曲では、Second Royal Recordsに移ったことによる変化と従来のアナのよさを絶妙なバランスで出したかったんですよ。

——「TEI」のイントロはめちゃくちゃドラマティックで、銅鑼がジャーンと鳴って壮大ですね。ドラムのリズムも始まりを告げるワクワク感があります。

大内 : あのイントロは一番最後に付いたんですよ。元は6分くらいあった曲で、よくするためにいろいろ試しましたからね。
大久保 : インディー・レーベルだろうが、スタジアム感は忘れたくないんです。僕たちはどんなに小さいハコでもスタジアム級のパフォーマンスをやろうというのがコンセプトにあるので、アルバムのイントロも大げさに(笑)。

属さないとはいえ、福岡は自分たちの中で変わらず大きい

——『HOLE』はセルフ・タイトル的な意味合いですか?

大久保 : そうですね。第2期のファーストというか。

——第1期と比べると、どう変わりましたか?

大内 : 大久保の詞ひとつ取っても、東京に出てきて明らかに世界観が変わりましたね。福岡時代があまりにもワン・テーマだったし。たぶんもう、あの頃の曲の感じにはならないでしょうね。
大久保 : 過去3作は“大人になりたくない”っていうのがテーマにあって。でも、今は少なくとももう子供ではないですよね。前のアルバムで「大人じゃないから」って歌ってるんですけど、もう歌えんなって(笑)。生きていくということをより考えるようになりました。

——前作からの変化だと、歌もバンド・サウンドもより力強くなった印象があります。

大内 : 今回、作品に初めて生ベースが入ったんです。スタジオに入るときも、リズム隊のボトム・アップは心がけました。そのおかげでパワフルになりましたね。
NOMA : 人間が弾くのと打ち込みとではやっぱり全然違いますよね。この3年は新しい発見がたくさんありました。

——アルバムの最初の構想は?

大久保 : バリエーションがあるもの。大内と僕でずっと作ってきたから、どうしても曲が似ちゃうんですよね。それはなくしたかった。
大内 : だいぶマンネリ夫婦みたいになってました(笑)。アルバムのジャケット・デザインを担当してくれた人に「お前らは色変えてるつもりでも、たとえば緑なら、ただそれを黄緑にしたくらいの違いしかない」っていうようなことを言われて、確かにそうだなぁって。
NOMA : 結局同じようなものになっちゃうのは僕も感じてましたね。だから、違う人(プロデューサー)が入ってくれたのは大きかったです。

——プロデューサーを入れた理由につながるわけですね。

大久保 : はい。今回は客観的なアドバイスをくれる人がいるし、最初になるべく弾き語りのシンプルな形で曲を作りました。あと、上田くんは歌詞を大事にしてくれる人なのがよかった。レーベルとしても初の日本語ものだし、歌詞をよりちゃんと聞かせられるアレンジにしようと。一つずつ、順を追って作っていきました。

——他に上田さんに期待したことは?

大内 : オシャレじゃない(笑)?
一同 : (笑)。
大久保 : Second Royal Recordsのアーティストって、ほとんどがレコード店員だったりするんですよ。音楽の知識や情報量がハンパじゃないから、楽曲を音楽的にアップさせる新鮮な要素を入れてくれるというか。そういうところかな。

——気の利いたアレンジを提案してくれたり?

大久保 : でも、ポンと「じゃあコレで」みたいなあっさりした処理じゃない。上田くんはアナが大好きで、アナに入りたいってずっと言ってくれてるんです。それくらいの愛情があるから、曲ごとにメンバーの立ち位置も考えてくれるし、1曲1曲に思い入れを持ってアレンジを加えていってくれました。

——「夜は幻」で聞こえるフルートや「PLANET」のストリングス・アレンジが新鮮でした。

大久保 : がっつりしたストリングスとかってそんなに入れたことがなかったから、やりたかったですね。さじ加減も今回は上田くんがいるからやりやすいし。

——「ZOMBIE」も好きな曲です。言葉がさまよってるような歌詞と派手なアレンジのアンバランスさがよくて。

大久保 : 僕、歌詞を重要視してて、すごく苦労して書くんですよ。これは一番書けない時期に書いた曲。歌詞が書けないこと自体を歌ってます。

——制作作業はどうやって進めていったんですか?

大久保 : 最初は何回か上田くんに東京に来てもらって、僕の家に泊まり込みで生活しながら時間を共有しました。いっしょに過ごして、大量の音楽を聴かせ合ったり、本の話をしたり、映画を観たり。本格的な作業の前に、そういう時間を大事にしましたね。

——そういうことは今まではしなかった?

大久保 : 全然しなかったですね。上田くんがやろうって言ってくれて、その重要さは作品が出来上がってわかりました。

——そのあとにレコーディングが始まって。

大久保 : そうですね。レコーディングは京都でやりました。今までは楽曲を完全に作ってからスタジオ合宿で録るやり方だったんですけど、今回は曲を作りながらアルバムができていった。5、6曲録ってから、“あとはこういう曲ができたらいいね”みたいな感じで、じっくり1年かけて。

——出来上がったアルバムを聴いてどうですか?

大久保 : すごく、好きです(笑)。

——歌もより聞こえやすくなったと思います。

大久保 : それは嬉しいですね。移籍したときは、いわゆるインディーっぽい音になっちゃう不安があって。レコーディングの設備にしても心配はあったけど、アレンジとかでうまくカバーできました。

——OTOTOYでは特典として未発表音源が付くんですよね?

大久保 : はい、すっごいふざけたのが(笑)。「アナのテーマ」っていうインスト曲です。
大内 : 3人の名前が連呼されてる、とだけ言っておきましょうか(笑)。

——わかりました(笑)。今後のビジョンはありますか?

大久保 : 活動しやすい環境が整ったし、間を空けずに次をどんどん出したいですね。せっかくこういうみんな顔の知れたアーティストが集まったレーベルらしいレーベルに所属できたし、それぞれに還元できるような成果を出したい。
大内 : 以前よりも自信を持って活動できそうです。新しい要素が加わりつつ、移籍してもアナっぽい作品ができたし。今年はどっしり動きます。
NOMA : この3年はけっこう不安でモヤモヤしてたこともあったけど、そんな中でSecond Royal Recordsに入ることが決まって、バンドの方向性とかいろいろなものが見えた感覚があります。今は迷いなくやれてますね。

——アナっぽいって話が出ましたけど、アナはどこかに属してない感じがいいんですよ。

大久保 : 属せないんです(笑)。結局、何にも属さないでいたいって思うようになりました。
大内 : 属さないとはいえ、福岡は自分たちの中で変わらず大きいです。これから福岡でのライヴもたくさん決まってるし、地元を大事にした活動はまだまだ続くと思います。福岡のシーンを引っ張っていく存在でありたいですね。

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LIVE SCHEDULE

2011/05/02(月)@新宿MARZ
w / ドリアン / The Brixton Academy / kenta hirano / U-HEY!(blackneonparty)

2011/05/04(水)@大阪 FANJ TWICE
w / TurntableFilms / 田中宗一郎 / 田中亮太 / 高橋孝博(HALFBY) / HANDSOMEBOY TECHNIQUE

2011/05/06(木)@名古屋栄TIGHTROPE
w / 上田修平(RUFUS)etc

2011/05/29(日)@DRUM LOGOS
w / スチャダラパー / TOKYO No.1 SOUL SET / Small Circle of Friends / 曽我部恵一withおとぎ話 / Port of Notes / bonobos

アナ ホールツアー

2011/06/11(土)@梅田Shangri-La
w / kuh

2011/06/12(日)@福岡glaf
w / kuh (mobile set)

2011/06/19(日)@渋谷O-CREST
w / kuh

PROFILE

大久保潤也(ボーカル、ギター、サンプラー)、大内篤(ギター、コーラス)、NOMA(ドラム)による3人組バンド。福岡で結成され福岡で活動を続けてきたが、現在は東京に拠点を移し活動中。バンド名は97年に雑誌コーナー「CORNELIUSとバンドやろうぜ!! 」への掲載(大久保、大内は当時中学生! )を期に命名、その後某航空会社からのバンド名使用差し止めというレアな経験を経て現在の表記に落ち着く。異例の速さでのメジャー・リリース、映画への楽曲提供、映像作品の主演、他アーティストのプロデュース、ドリル・メーカーmakita社とのタイアップ、福岡の名物フェス「Sunset Live」への連続出演、過去にスチャダラパー、口口口やgroup_inouなどを召喚した自主イベント「PATROL」主催など精力的かつマルチに活躍してきた彼等が、2010年なんと京都発インディーズ・レーベルSecond Royal Recordsに電撃移籍。前作『FLASH』から、およそ3年ぶりとなる新作フル・アルバム『HOLE』をリリース。

この記事の筆者
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田山 雄士

ライター/編集者です。

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