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2026/03/31 18:00

NaNoMoRaL『wa se te wo』──音を聴きながら辿る作品の核心「最後に残るのがピース」

NaNoMoRaL

OTOTOYの2026年は、NaNoMoRaLとともに幕を開けました。2月1日には、アルバム『wa se te wo』にフォーカスした、ハイレゾ全曲試聴/公開インタビュー/ミニライブの3部構成イベント〈OTOTOY × NaNoMoRaL スペシャル・トークイベント “wa se te wo”〉を開催。公開インタビューは、梶原パセリちゃんがPCを持ち込み、楽曲制作に使用しているDAW (デジタル・オーディオ・ワークステーション) の画面を見せ、音を再生しながらのトークとなりました。その雰囲気を再現すべく、本記事は、イベント当日に実際に再生された音を聴きながら読める構成でお届けします。諦観と幸福が同居するNaNoMoRaLの歌詞世界、そしてJ-POPとしての強度に満ちた楽曲に、楽しく・深く切り込んだインタビューを、当日の空気感とともにお楽しみください。

NaNoMoRaL、5thミニアルバム

INTERVIEW : NaNoMoRaL

NaNoMoRaLの最新作『wa se te wo』は、まず声が近い。けれど寄り添いすぎることはなく、ときにドキッとすることも言う。それでも最後には、胸の奥に大切ななにかを置いていく。今回のインタビューでは飯田が聞き手となり、雨宮未來 (みく) と梶原パセリちゃんの2人に、前作からの4年間のこと、そして楽曲がどのように生まれていったかを、じっくりと聞いた。その歩みは、交わされた言葉にも、その場で再生された音のパーツにも、たしかに刻まれている。曲順に沿って、それを確かめていこう。

インタビュー : 飯田仁一郎
文 : 高田敏弘
撮影 : 大橋祐希
機材協力 : ADAM Audio

「それを超えるものを作らないと意味がない」と思っていた

左から、雨宮未來 (Vo.)、梶原パセリちゃん (Vo./Cho./Manipulator)

──前作『ne temo same temo』から4年。1月のインタビューでは、この4年間はちょっと停滞だったんだよね、みたいなこともおっしゃっていました。おふたりにとっては、どんな4年間でしたか?

梶原パセリちゃん (以下、梶原) : やることはやってるんですけどね。でも、自分たちが伝えたい以上の広がりがなくて。単純に人数です。もっと多くのひとに聴いてもらわないと意味がないと思ってるんで。

雨宮未來 (以下、雨宮) : ライブを本当にすごくやってたし、一本一本しっかりやってたから、自分のなかでは4年空いた感じがしてなくて。

梶原 : その間に出したEP『KonoYono』は、自分では「良いものができた」と思ってたんですが、それがそんなに広がらなかった、という思いもありました。

──“エンドエンドロール”、素晴らしい曲じゃないですか

雨宮 : あの曲は、ふたりで作ったんです。

梶原 : それ絶対言うよね (笑)。歌メロはほぼ、未來さんです。

雨宮未來

──4年の間、曲が作れない状況でもあった?

梶原 : 『ne temo same temo』は、やりきった感があって、それを超えるものを作らないと意味がないっていう思考になってしまって。そこから曲を作るのが一気に遅くなりました。

──そこから今回のアルバムを作り上げられた理由は?

梶原 : 曲ができないなりに、1年に1回、2曲作らなきゃいけないっていう条件があって。芸人の岡野陽一さんの単独ライブ「岡野博覧会」のオープニング/エンディングを毎年書き下ろしてたんです。尺が1〜2分とかで。僕、そういう短い曲を伸ばしたりするの、あんま好きじゃないんですけど、曲も足りないし思い入れもあったから、伸ばして1曲にしようって。それを数えたら7曲ぐらいあるな、ミニアルバムいけるな、みたいな。

梶原パセリちゃん

──曲を伸ばす作業ってどれくらい大変なんですか?

梶原 : 1番と後ろサビはできてる。だから「2番を作ればいいだけ」なんですけど、その1番と2番つなぎの何小節で1〜2週間悩んだりします。自分のなかではいちど仕上がってるから、なにをやっても繋がりが悪い気がする。たとえば、“ギリフギリ” の1番から2番に渡す、ここ……

“ギリフギリ” 1番と2番の間の2小節

梶原 : ……この2小節に1週間かかりました。

──どういったことを悩むんですか?

梶原 : 何小節にするのか、例えばサビのコードをやって2番に行くのか、とか。なにをしても僕のなかでは変なんです。最終的にこのシンプルな2小節になったんですけど、このギターのフレーズ……

その2小節で鳴っているギター

梶原 : ……この曲に1回も出てきてないし、自分のなかでは曲のイメージと合ってないなっていうのがあって、いまだに僕のなかでは、ちょっと変。

「革命」とか好きかな、やる気出るかな

──2026年は「革命の年」とおっしゃってましたが、2026年、動くと決めたきっかけは?

雨宮 : NaNoMoRaLが8周年で末広がりで、私自身が活動12周年を迎えるから干支を一周するので、めでたいなって思ったんです。

──鬱々とした4年間の反動みたいなものではなく?

雨宮 : ないです (笑)

梶原 : 未來さんは、ずっとモチベーション高いんですよ。だから、僕のケツを叩くために言ってるんだと思いますよ。

雨宮 : それもあります。男の子だから「革命」とか好きかな、やる気出るかな、と思って (笑)

──アルバム・タイトルの『wa se te wo』の意味が気になりますが

梶原 :「幸せなら手を叩こう」のなかにある文字をとって、「wa se te wo」です。ほんとは「幸せなら手を叩こう」にしたかったんですけど、もうあるじゃないですか。怒られるかなと思って。

──頭と後ろとかじゃなく、抜き文字にした理由は?

梶原 : 単純に語感です。あと、バレないと思って。

──南波さんに当てられてるじゃないですか

梶原 : 見事に当てられましたね。どこでも言っていなかったので、本当はこのトーク・イベントで、僕が明かしたかったんですけど (笑)

──「幸せなら手を叩こう」をタイトルにしたのは?

梶原 : 僕はずっと「幸せ」と「不幸せ」を書いてるんです。「不幸せのなかにある幸せ」をずっと書いていて。いままではその「幸せ」を内に留めておいてもいいよ、っていう感じだったんだけど、だんだん「幸せだったらアピールしよう」っていう曲が増えてきたんです。だから、一番いまの僕らの音楽性に合ってる言葉だなと思ってタイトルにしました。幸せだと言ったほうが幸せを呼ぶ。みんなで幸せになりましょう、っていう意味です。

NaNoMoRaLを一番表すのは「最後に残るのがピース」

──NaNoMoRaLの歌詞のトータルな世界観として伝えたいことは?

梶原 : 南波さんがレビューにも書いてくださってましたが、全曲、同じことしか言ってないんですよ。同じテーマを言いかたを変えて言っているだけで。NaNoMoRaLを一番よく表している言葉は、“ピース” っていう曲の「それが生きてるってことなのさ」とか「最後に残るのがピース」っていうところです。それをいろんな角度から言い続けてるだけです。

──「ピース」は「平和」のピース?

梶原 : 平和に近いかな。ハッピーの意味でピースって使ってます。最後にはピースが残る世界であってほしい、という意味ですね。

──楽曲の作りかたはこの4年間で変化しましたか?

梶原 : 今回に関しては、ボーカルを自分の考えよりも、ちょっと大きくしました。あと、音の綺麗さには、めっちゃこだわりました。録りはギターだけ生音で、ベースとドラムは打ち込みなんですけど、やっぱり生のドラムを録音したものには勝てないんで。なんとか近づけようと、ドラムの音にはこだわりました。あと、NaNoMoRaLのトラックは、ドラムとベースの音源を一貫して同じものにしてます。それは、打ち込みだけど「ひとりのドラマーが叩いている」、「ひとりのベーシストが弾いている」っていうことにしたいから。

──ここからは1曲ずつ順に伺っていきます。1曲目は “だま”

梶原 :「朝と夜を繰り返し だまになって死んでいく」っていうこのワンフレーズがめちゃくちゃ肝です。人間なんてそんなもんだろう、という。これを言いたいがために頭からいろんなことを言ってます。いいことも嫌なこともあるでしょうけど、どうせ毎日があって、最終的には死んでいく。みんな死んでいくんだから、そんな気にすることないんだよ、と。

──楽曲のポイントは?

梶原 : 僕が一番好きなのは、間奏のとこなんですけど……

──ドラムのとこですか。あれ、むちゃくちゃカッコいいですよね

梶原 : ドラムとピアノの絡みがすごい好きなんですよ、ここ…

“だま” の間奏、ドラムとピアノのみ

梶原 : このピアノの……これ!

そのなかのピアノのフレーズ

梶原 : これがねえ、好きなんですよ。僕、ドラムがバタバタしてるの好きなんですよ。これも打ち込みで。あと、肝はこのギターで……

“だま” の間奏で鳴っているギター

梶原 : 間奏のところですけど、このギターがずっと鳴ってることで壮大な感じが出てると思います。……これ、話し出すと終わらないですね (笑)

“だま” の間奏、ギターとドラムとピアノ
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J J

パンク・バンドLimited Express (has gone?)のギター・ボーカル。BOROFESTAの主催者。ototoyの取締役。JUNK Lab Recordsのレーベル・オーナー。ライターやイベント・オーガナイズも多数。

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高田 敏弘 (takadat)

Director。東京都出身。技術担当。編集部では “音楽好き目線・ファン目線を忘れない” 担当。

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