VOOZH about

URL: https://ototoy.jp/feature/2020061201

⇱ Akiyoshi Yasudaが提示する記憶を残す音楽『memento -day1』 - OTOTOY


2020/06/15 18:00

Akiyoshi Yasudaが提示する記憶を残す音楽『memento -day1』

Akiyoshi Yasuda

AAAやSexy Zoneなど多くのアーティストへ楽曲を提供している日本屈指のプロデューサー / アレンジャー、SiZK。また、テクノを基軸にハウス、エレクトロなどのダンス・ミュージックを独自に昇華したサウンドを展開しているSiZKのソロ・プロジェクト、★STAR GUiTAR。その2つの名義を持つ彼は、さらに劇伴作家のAkiyoshi Yasudaとしても活動している。そんなAkiyoshi Yasudaの約2年ぶりとなる新作『memento -day1』が6月5日にリリースされた。今作は、“自分の死生観を切り取ってひとつひとつ残していきたい”というテーマをもとに作られたメメント・シリーズの第1弾。テーマに沿って作られた楽曲はアンビエント要素を強く取り入れ、時の流れを感じるノイズが脳内に響き渡る。今回なぜ、Akiyoshi Yasudaとして作品をリリースしたのか。全3曲の聴きどころやアンビエントの楽しみかたなど、今作について掘り下げたインタヴューをお楽しみください。

劇伴作家Akiyoshi Yasudaとしての新作『memento -day1』をハイレゾで!

INTERVIEW : Akiyoshi Yasuda

音階、メロディー、リズム、節、情緒、起承転結…… 音楽が持つべきそんな要素を取り除いた時になる音楽とは一体? 音楽家、Akiyoshi Yasudaの長い探求の旅がはじまった。

インタヴュー : 飯田仁一郎
文 : 東原春菜
写真 : 大橋祐希

死ぬことが怖くなくなった感じがより強くなってきた

──今回、★STAR GUiTARとしてではなくて、なぜAkiyoshi Yasudaとして作品を作ろうと思ったのでしょうか。

当たり前ですけど最近★STAR GUiTARとAkiyoshi Yasudaの同一人物感がでてきた気がして。音も近づいてきたのでAkiyoshi Yasudaがさらに突き詰めたという感じですね。こうすることによって、★STAR GUiTARでは逆の方向性の音楽に振り切りやすくなるのかなと思っています。

──Akiyoshi Yasudaとしての音楽性を定義すると?

★STAR GUiTARは煌びやかで外向きな音楽、Akiyoshi Yasudaは内側に寄り添うような音楽を意識しています。

──今作のタイトル『memento -day1』には深い意味を感じることができます。

タイトルは、★STAR GUiTARの『for ever』『&ever』から繋がっていて。自分の死生観を切り取ってひとつひとつ残していきたいというテーマのもとに作りました。芸術作品のモチーフとして広く使われる「メメント・モリ」という言葉があるんですけど、「死は確実に来る」という意味があって。「メメント」だけだと「記憶を残す」という意味になるんです。もちろんいま世の中が大変な状況だとわかっているんですけど、死が必ず訪れるものとして受け入れられると、死ぬことが怖くなくなった感じがより強くなってきた。輪廻じゃないけど、続くものとして捉えられる。だからこそこれからなにをしようかって考えたとき、「もっと自分のやりたいことを掘り下げたいな」というのと、「自由な音楽を作りたい」と思ったんです。そのとき、自分が思っていることと、「メメント」という言葉がリンクしたので“memento”という言葉をタイトルにしました。

★STAR GUiTARの『for ever』と『&ever』についてのインタヴューはこちら↓

──死生観の記憶を残したかったと。

そうです。前に『風ノ旅ビト』というゲームをやったとき「命はずっと回り続けるんだ」なということを感じて。それがいまでも残っていて、それを自分なりに解釈をしたものを作りたかったんです。『風ノ旅ビト』はその世界にいる命の歩んできた経験、記憶を主人公、こちら側に追体験させるような作り方なんですね。まさに記憶を記録するというか。

──『風ノ旅ビト』のどういうところに共鳴したんですか?

人が協力して文明を作るけど争いが起こって滅びて、また戻るということを永遠とやっていて、それを追体験していくようなゲームなんですけど、絵も含めて世界観を押し付けないところに共鳴しました。美しいものも苦々しいものもそこには同等にあってとてもリアルに感じましたね。

『風ノ旅ビト』(PS4™ プロモーショントレーラー)
『風ノ旅ビト』(PS4™ プロモーショントレーラー)

──Akiyoshi Yasudaの楽曲は、もともとアンビエントの要素がありましたが、今回はだいぶ振り切った印象を受けました。なぜ、そこに行きついたんですか?

音楽的なところだけで言うと、テンポとか拍子とかリズムをなくしたかったんですよね。

──それはなぜ?

テンポとか拍子とかリズムのような当たり前にあるものをなくして自由に作ってみたらどうなるのかなと思ったんです。僕は間を自然に取る癖があるのでそこから一度離れてみたくて。

──テンポと拍子とリズムが不自由に感じてしまった理由はなにかあるんですか?

前にAkiyoshi Yasudaとして音源を出したとき、海外のかたからミクスチャーだと言われることが多かったんですよね。それで、一度振り切ったところで勝負してみたいなと。

きれいに纏まってるものに違和感があって

──なるほど。1曲目の“memento”は、だんだんと盛り上がるのに最後はその盛り上がりが一瞬で消えるじゃないですか。僕的には、ここが本作のポイントだなと思っているんですが、“memento”の聴きどころを教えてください。

“memento”はアンビエントな曲のなかで、何カ所か盛り上がるところがあるんですよ。そういう抑揚の部分をどこに持ってくるのかという部分は細かく考えました。「そこが盛り上がるポイントですよ」という抑揚のつけ方をしないで、あくまで流れの中で盛り上がりを意識して。あと、あえて余韻を残さない終わりかたの潔さが聴きどころです。

Akiyoshi Yasuda“memento”(『memento -day1』収録)
Akiyoshi Yasuda“memento”(『memento -day1』収録)

──2曲目“in”のポイントはどこでしょう?

今作のタイトルに“day1”って付けているんですけど、これは今後“day2” “day3”と続けようと思っていて。“in”という曲名はメメントの1作目の入口という意味で付けたんですよ。あと、“in”は散発的に出てくるような音が散りばめられていて、その音が空間の中にいたときの印、気づきになったらいいなという思いがあります。

──そして、3曲目の“key”は?

“key”は、“in”との繋がりがあって、さっき話した「メメントの1作目の入口」の扉を開ける「鍵」という意味があるんです。曲中同じことを繰り返していると思わせつつ、少しずつ変化していくところがポイントですね。あと、“key”はミニマルな作りかたをしたので、1、2曲目と同じ部類で、「どこにいるのかわからなくする」という部分もありつつ、テンポは少し残っているような感じで作りました。それと「どこにいるのかわからなくする」ということは「どこにでもいれる」とも思っていて鍵はどこにでもあるじゃないですけど、いつでもそばにあるみたいな意味もあります。

──実は“key”には拍子があるということですか?

実はあるんですけど、わざとずらして作っている感じですね。

──1曲目と2曲目には完全にビートがないのに、3曲目にビートがあるから、もしかしたら“key”によって作品を違う色にしようとしているのかなという風に捉えていました。

作品をまとめる役割ではあると思います。1、2曲目の同じような曲の中にあえて違和感として最後に印象が違う曲を持っていきました。ジャケットの話とつながるんですけど、きれいに纏まってるものに違和感があって、少し滲んでるようなもののほうが人間味あって好きなんですね。作品としてもそういう滲んだ感じ、違和感を出せたらと思いこの3曲になりました。

──このジャケットはシンプルな感じもしましたけど、なにをイメージしたんでしょうか。

いま話した違和感というところにつながるんですが、ジャケットの色味としては白がいいんです。けど、きれいすぎるとつまらないので違和感としてくすんだ黒を足しました。すごく美しい人が悪態をついている場面を見たとき、同じ人間だなと感じて逆に高感度が上がる感覚に近いですね。

新作『memento -day1』のジャケット写真

──今回、実際に振り切って制作してみたことで、どんなところが難しかったですか?

アンビエントのジャンルは意外と早く作れるのかなと思ったんですけど、むしろ音が少ない分、より粗が目立ちやすくて、細かいところまで聴きながら作らないといけないんです。だからそこが難しくてとても時間かかりました。

──それこそ、ゴールがないというか。

そうですね。自分がどこを作っているのかわからなくなって、制作途中でリスナー化してしまってずっと聴いていることもありました(笑)。

──そうなりますよね(笑)。リスナーとしてはアンビエントをどのように楽しんだらいいのでしょうか。

眠れないときとか夜に聴くのがベーシックな聴きかただと思うんですけど、僕のオススメとしては“雑踏の中”で聴いてみてほしいです。さっき「リズムとかなくしたい」と言いましたけど、雑踏の中にいるとそれが自然とリズムに聞こえてくるんですよ。ゆったりとした美しい音に雑踏のノイズが乗って、別の場所にワープしたかような不思議な感覚を楽しめます。あとは、不安だったり、疲れていたり、悩んでいたりする日常から少し離れたい時に聴くというよりも“流すような感じの聴きかた”もいいと思います。音が寄り添うような感じがあって、どこか遠くへ行ける懐かしい感覚も楽しめるかも。

──アンビエントを聴いたときに難解に感じる人もいるかなと思うんですけど、そのあたりについてはどう思いますか?

★STAR GUiTARを好きな人はびっくりすると思うので、難解に感じる気持ちは多少わかります。「さあ、聴きましょう」という感じがあるとより難解に聴こえると思うので、ナチュラルに楽しんで聴くだけでいいと思います。

『インターステラー』の感覚に近いのかな

──1曲ずつ聴きどころは訊きましたが、ひとつの作品としてこだわった部分を教えてください。

さっきのテンポの話と繋がるんですけど、曲の最初かもしれないし最後かもしれないみたいに、どこを聴いているのか分からなくしたかったんですよ。いわゆる、普通のグリットに沿ったら「この展開があって、盛り上がるところはここですよ」っていうのがあると思うんですけど、それをなくしたかった。たとえば、映画の『インターステラー』で、5次元の話がでてきて未来と過去が現在と同時に行き来できるシーンがあるじゃないですか。そういう感覚に近いのかなって思います。

──なるほど。音作りはどのようなことを意識して作りましたか?

サンプル音源も使っていますし、普通のシンセサイザーも使っていて。めちゃくちゃ引き延ばしたり縮めたりしながら音響的な作りかたをしています。

──外の音をサンプリングしたりギターを入れたりはしていないんですよね。

ノイズは使っているんですけど、楽器としての生音は使っていないですね。

──音自体はどのように選んでいるのでしょうか。

僕は、夜中に冷蔵庫が「ブーン」と鳴っているような音が好きで、そういう音のレイヤーを選んでいます。

──制作過程では、タイトル、ビート、音など、どれが最初にできて、曲を作っていくんですか?

大枠は即興性に近いです。浮かんだものからどんどん膨らませていって、最後にタイトルを決めるという感じですね。

──音作りの面で、今回参考にしたアーティストは?

制作期間によく聴いていたのは、ポストクラシカル系のかたで、オーラヴル・アルナルズとか、ヨハン・ヨハンソンとかを聴いていました。

オーラヴル・アルナルズ“Only The Winds”(『For Now I Am Winter』収録)
オーラヴル・アルナルズ“Only The Winds”(『For Now I Am Winter』収録)
ヨハン・ヨハンソン“End Of Summer - Part3(Excerpt)”
ヨハン・ヨハンソン“End Of Summer - Part3(Excerpt)”

──今作からメメント・シリーズがスタートしたということでよろしいんですよね?

そうですね。メメントはメメント・シリーズとして終わらずやっていきたいなと思っています。次はメメントとは関係ないコンセプトのアルバムで出すかもしれないし、メメントのセカンドを出すかもしれないし、それくらい定期的か不定期かわからないけど、自然な感じで続けていければいいなと思います。いままでのなかで1番極端に振り切っているので、どういう反応をもらえるのか楽しみです。

編集 : 東原春菜、鈴木雄希

『memento -day1』のご購入はこちらから

過去作、関連作品はこちら

過去の特集記事はこちら

Akiyoshi Yasuda
レヴュー

★STAR GUiTAR
インタヴュー 新↓古

PROFILE

Akiyoshi Yasuda

愛知県一宮市出身、SiZKとしてアーティストへの楽曲提供を起点に、2010年自身のユニット“★STAR GUiTAR”として、H ZETT M、fox capture plan、Schroeder-Headz、世武裕子、といった豪華なピアニスト陣とのコラボレーションを実現。

テクノを基軸にハウス、エレクトロ、ドラムンベースやエレクトロニカなどのダンスミュージックを独自に昇華したサウンドを展開する。

2014年9月10日には「ダンスミュージック×ピアノ」をテーマにしたコンセプト・アルバム「Schrödinger’s Scale」をリリースし、店頭や口コミが広がり1万枚以上のヒットを記録する。

2017年、劇伴作家Akiyoshi Yasudaとしても始動。TBSテッペン!水ドラ!!『レンタルの恋』(剛力彩芽主演)の劇中音楽を担当。電子音のソフトなテクノ&ダンス・ミュージックにギターやピアノのアコースティック音を融合、その音像が関係者の評価を呼び、2018年には日本テレビアニメ『3D彼女 リアルガール』を手掛ける。

2019年”NHK発・ゲイの男子×腐女子”として話題沸騰中のドラマ「腐女子、うっかりゲイに告る。」の劇中音楽に大抜擢され“おすすめトレンド”にて1位を獲得するなど高い評価を得る。 また同年、全世界で900万ダウンロード突破のスマートフォン向けゲームアプリを映画化した「劇場版 誰ガ為のアルケミスト」の劇中音楽を担当、「マクロス」シリーズや「アクエリオン」シリーズを手掛けてきた河森正治が総監督を務め話題を呼んでいる。 劇伴作家として、CM&WEB Sound等、無限の可能性を提示し続け活動の幅を広げている。

【公式HP】
https://www.studioselfish.com/
【公式ツイッター】
https://twitter.com/SiZK_STARGUiTAR

この記事の筆者
👁 Image
J J

パンク・バンドLimited Express (has gone?)のギター・ボーカル。BOROFESTAの主催者。ototoyの取締役。JUNK Lab Recordsのレーベル・オーナー。ライターやイベント・オーガナイズも多数。

この筆者の記事
この記事の編集者
👁 Image
鈴木 雄希

1994年生まれ、埼玉県出身。大学卒業後、2017年にOTOTOY編集部に加入。主にロックやJ-POPを中心に企画、編集、執筆をしています。お笑い好きのテレビっ子。

この編集者の記事
この記事の編集者
👁 Image
東原 春菜
この編集者の記事