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⇱ Helsinki Lambda Clubは、またここから始まる──独立をフロアと分かち合った濃密なワンマン“shuffle” - OTOTOY


2026/01/16 12:00

Helsinki Lambda Clubは、またここから始まる──独立をフロアと分かち合った濃密なワンマン“shuffle”

Helsinki Lambda Club

2026年より長年所属した〈UK.PROJECT〉を離れ、独立という新章を歩み出したHelsinki Lambda Club。1月12日(月)、渋谷チェルシーホテルにて〈独立記念ワンマンライブ“shuffle”〉を開催した。フロアを埋め尽くした観客とともに祝われたその一夜は、バンドの現在地とこれまでの軌跡を90分に凝縮した濃密な時間となった。フロアと分かち合われたのは「独立」という事実以上に、これからも変わらず音楽を鳴らし続けるという確かな意思。ここでは、その意思が鮮やかに刻まれた一夜を振り返る。

当日のセットリスト・プレイリストを再生しながらどうぞ!

LIVE REPORT : Helsinki Lambda Club 独立記念ワンマンライブ“shuffle”

取材・文 : 石角友香
撮影 : Yoshiaki Miura

我慢しない。Helsinki Lambda Clubの音楽は積極的に摂取していないと「え? 今こんなことやってるんだ」という驚きに直面する。過去の音楽性を封印するわけじゃないが、初期のインディ・ポップのイメージがあるリスナーにはここ2〜3年のサイケデリック路線やファンク要素のあるダンス・ロックに驚くだろう。しかもヘルシンキのやり方は潔いゆえに驚きをもたらす。インディ・ポップにちょっとファンク要素を加味するとかいう姑息さがない。それはソングライターの橋本薫(Vo/Gt)がひとつの型だけで自分の脳内や心情を満足行く形でアウトプット(というと無機物っぽいが)できないからだろう。

前置きが長くなってしまったが、今回の〈独立記念ワンマンライブ“shuffle”〉は自分から溢れる、もしくは溢れるものを整理してアウトプットする際に「我慢しない」Helsinki Lambda Clubというバンドが特定の時期やジャンルに拘泥しない(できない)資質を背景にしつつ、同時にジャンルごとに整理された本棚を閲覧していくようなクロニクル的な意味も含んでいたように思う。しかもアンコール込の90分凝縮版で、だ。それは独立記念のパーティという改めての自己紹介に最適だったんじゃないだろうか。

2016年に東京での初ワンマンを行った渋谷チェルシーホテル。選定理由としてバッチリだが激混みである。でもステージを見つめるオーディエンスの瞳はキラキラしていて、そのことに変な話癒やされる。スターターはタイトル通りのスピード感で一気にインディ・ポップが流れるクラブ・イベントみたいな自由度に満たされる「スピード」。物理的にステージ一方向を見ざるを得ないが、オーディエンスの気持ちはクラブで好きに体を揺らすマインドを感じる。そして橋本の叫びとイントロのリフに歓声が上がったお馴染み「ミツビシ・マキアート」以降はイントロが鳴るたびに歓声が上がる。さっそくアクション多めにベースのネックを振り回す稲葉航大に思わず笑顔になって、サビのシンガロングも自然に発生。弾むベースラインに解放される「ユアンと踊れ」。ボーイ・ミーツ・ガールとロックンロールの無敵の物語が時を経て包容力すら備えている。それは続く「Skin」でも「何とかしなくちゃ」にもシームレスに繋がっていく。

橋本薫(Vo/Gt)

サイケデリックやファンク/ダンスな楽曲が生み出された今でも、タイトなビートとパワーコードの8ビートが鳴ればいつだって今いる場所にティーンエイジの汗と焦りと無軌道な愛の記憶がフラッシュバックするのだ。と、同時にバンド・アンサンブルとおのおのの演奏の精度は格段に上がっているという、いい意味での安定感を伴って。そのことがむしろ歳を重ねても変わらない人としての軸を見せてくる。グッとテンポを落としたビートに輝度の高い熊谷大起(Gt)の単音フレーズが重なり、どこか儚いムードが漂う橋本なりの死生観が鮮明な「しゃれこうべ しゃれこうべ」が、しっかり言葉の意味を伴って侵入してくる。歌を音に変換するように目をつぶり神妙な顔つきでルートを弾く稲葉が印象に残る。

稲葉航大(Ba)
熊谷大起(Gt)

チューニングする間のフロアの静まり返った緊張感を破るように、橋本が新年の挨拶と改めて独立をアナウンス。「ちょうど今日月曜日、しいたけ占いによると双子座は「またここから始めますか、の青が出てたのでちょうどいいと思います」と笑わせた。序盤とガラリとムードを変えて軽快なポップ・ソウル「PIZZASHAKE」がオリジナルより肉体感を伴って放たれる。稲葉のソロを軽くフィーチャーしつつ、2本のギターの絡みも冴える。腰を揺らされたフロアは「キリコ」で本格的にねっとりしたグルーヴに突入。熊谷のオリエンタルでフュージョン・ライクな音色が妖しい色を差して、アジアの夜を想起させつつ、橋本の声はどこまでも素直な質感。このバランスがむしろ歌詞をストレートに届ける。ダンス・ミュージックの機能性を岡田優佑(BROTHER SUN SISTER MOON)の端正なドラムが堅持しつつ、艷やかなムードは続く「Happy Blue Monday」に接続。ギター2本のユニゾン・リフがツボを押してくる上に、間奏ではギターのレイヤーが目眩のような感覚に陥らせる。こんな官能的なアレンジとパッと聴き官能的なようで、自己に向き合っているようにも聴こえる二面性のあるリリックに唸る。橋本のサビでのボーカルの上昇に切なさを感じる「Horse Candy」、ジャングリーなギターがみんな大好きな不埒なロックンロール・リバイバルのあの輝きを連れてくる「Shrimp Salad Sandwich」と続く「Good News Is Bad News」で存分に堪能させてくれる。マイナー・チューンのダンス・パンクとまた違う色気を再認識できる流れだ。それにしてもスネアの音、良すぎない? 岡田のプレイ・スタイルもだが、今日のライブPAさんに大感謝である。

バンドを始めた頃は「ノー・フューチャーなライブばかりしていた」と振り返る橋本。それは若気の至りだけじゃなく、彼の理想と現実の葛藤からくるものだったんじゃないだろうか。おそらく今も葛藤はあるだろうけれど、それ以上にバンド、そして曲を作り続けていることそのものが答えなんだと思う。「何が変わるわけじゃないけれど、これからもいい曲を作って、いいライブをしていこうと思います」と簡潔に述べた。

トーンもジャンル感も違うセクションの最後は目下の近作アルバム『ヘルシンキラムダクラブへようこそ』からの選曲。ここからの3曲は怒濤の没入感で、立体的な音像で物語に誘う完成度に圧倒された。音源では素朴にも聴こえる「触れてみた」がもうすでに音像からしてサイケデリックで、ぬくもりと官能が同居する世界観にとどまらないある種の酩酊に襲われる。そして全編通して圧巻の1曲だったのが「収穫(りゃくだつ)のシーズン」。ダブっぽい音響だけでなく、メタル的な厚いアンサンブルでは軽くヘドバンすら起こり、インスト部分はもはやシューゲイザーもジャム・バンドも混在する。ライブでは曲構成のチャレンジ性を通り越して、ミュージシャンとしての筋力というヘルシンキにあまり抱かなかった感想すら浮かんだ。抽象度の高い歌詞が、意味を宙吊りにしたまま飲み込めた感じだ。「収穫〜」のエンディングからまるで映画『ゼロ・グラビティ』の終盤みたく、無重力からGを感じて着陸する感触の音から本編ラストの「See The Light」へ。人力トランスっぽさもあるのにビートはポストパンクの感触、ときにジャム・バンド。なんかもう1バンドフジロックな趣きだ。フロント3人が並んで歌う場面に至っては独立という旅立ちにハマりすぎて、涙腺にきてしまった。残響がループしたまま、ステージを後にしたメンバー。どうアンコールしたものか躊躇していたフロアから少しずつ拍手が広がっていくのもすごく自然だった。

アンコールでは3、4月の東名阪ツアー〈SUTEKI NA HITOTACHI〉の対バンを発表。大阪はNo Buses、名古屋はドミコ、東京はThe Novembersというなかなか強いメンツだ。そして新曲にちなんだ新しいTシャツとCDのパッケージが間に合ったことを喜び、独立に際する気持ちと新曲の関連を話し始めるのだが、諸行無常から宇宙の真理まで、なぜか稲葉にだけ対面して説教する様子のおかしいMCに。まあ、ここで曲の解説をするのも野暮というところで、当該の新曲「止められないっ!」を初披露。意外にもアッパーで起伏のある独特なメロディ、暴走する間奏セクションの痛快さに思わず笑ってしまった。現在はすでに配信リリースされているのでぜひチェックしてほしい。正真正銘のラストは記念日を祝いつつ、変わらないスタンスを示すように「ロックンロール・プランクスター」がフロア一面を笑顔にしたのだった。

編集 : 石川幸穂

セットリスト

Helsinki Lambda Club
〈独立記念ワンマンライブ“shuffle”〉

2026年1月12日(月・祝)@渋谷チェルシーホテル

M1.スピード
M2.ミツビシ・マキアート
M3.ユアンと踊れ
M4.Skin
M5.何とかしなくちゃ
M6.しゃれこうべしゃれこうべ
M7.PIZZASHAKE
M8.キリコ
M9.Happy Blue Monday
M10.Horse Candy
M11.Shrimp Salad Sandwich
M12.Good News Is Bad News
M13.触れてみた
M14.収穫(りゃくだつ)のシーズン
M15.See The Light

EN1.止められないっ!
EN2.ロックンロール・プランクスター

フォト・ギャラリー

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撮影 : Yoshiaki Miura

新曲情報

独立後の新曲は、別れも決意も飲み込んで加速するダンス・チューン!


ライブ情報

Helsinki Lambda Club 東名阪QUATTRO TOUR〈SUTEKI NA HITOTACHI〉

<大阪公演>
日程:2026年3月11日(水)
会場:梅田CLUB QUATTRO
時間:OPEN 18:15 / START 19:00
出演:Helsinki Lambda Club, No Buses
料金:ADV(一般) ¥4,800
   ADV(学生) ¥3,800
   ※学生証持参必須
   DOOR ¥5,300
   ※すべてドリンク代別

<名古屋公演>
日程:2026年3月12日(木)
会場:名古屋CLUB QUATTRO
時間:OPEN 18:15 / START 19:00
出演:Helsinki Lambda Club、ドミコ
料金:ADV(一般) ¥4,800
   ADV(学生) ¥3,800
   ※学生証持参必須
   DOOR ¥5,300
   ※すべてドリンク代別

<東京公演>
日程:2026年4月8日(水)
会場:渋谷CLUB QUATTRO
時間:OPEN 18:15 / START 19:00
出演:Helsinki Lambda Club、The Novembers
料金:ADV(一般) ¥4,800
   ADV(学生) ¥3,800
   ※学生証持参必須
   DOOR ¥5,300
   ※すべてドリンク代別

チケット予約:https://eplus.jp/hlc-26tour/

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Helsinki Lambda Club ディスコ・グラフィー

Helsinki Lambda Club プロフィール

【メンバー】
橋本薫 (Vo/Gt), 熊谷太起 (Gt), 稲葉航大 (Ba)

2013年夏に結成されたヘルシンキラムダクラブは、ボーカルの橋本薫を中心とした日本のオルタナティヴ・ロック・バンド。
中毒性の高いメロディー、遊び心のある歌詞、実験的なサウンドは、一曲ではガレージロック、次の曲ではファンクやソウルと変幻し、音楽的ジャンルや文化の垣根を越える。

〈FUJI ROCK FESTIVAL〉や〈ASAGIRI JAM〉などの国内でのフェス出演に加え、香港、中国、台湾、シンガポール等でのライヴ、そして〈SXSW〉への出演やイギリス・ツアーを果たすなど、日本のロック・シーンにはかけがえのない存在となっている。

長年所属したUK.PROJECTを離れ、2026年1月1日(木)より独立。
1月14日(水)には新曲止められないっ!」をリリースした。

■Official HP : https://www.helsinkilambdaclub.com/
■X : @helsinkilambda
■Instagram : @helsinkilambda
■YouTube : @helsinkilambda

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石川 幸穂
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