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⇱ REVIEWS : 062 洋楽ロック (2023年7月)──宮谷行美 - OTOTOY


2023/08/03 18:00

REVIEWS : 062 洋楽ロック (2023年7月)──宮谷行美

"REVIEWS"は「ココに来ればなにかしらおもしろい新譜に出会える」をモットーに、さまざまな書き手がここ数ヶ月の新譜からエッセンシャルな9枚を選びレヴューする本コーナー。今回はReal Soundなどの音楽メディアでも活躍中のライター、宮谷行美が洋楽を中心にオルタナティヴなロック+αのいま聴くべき作品9枚をレヴュー。

OTOTOY REVIEWS 062
『洋楽ロック(2023年07月)』
文 : 宮谷行美

Beach Fossils 『Bunny』

前作『Somersault』から初のピアノ作品を挟み、6年ぶりとなるスタジオ・アルバムを発表した彼らは満を持して原点へと回帰した。彼らが築き上げたドリームポップの夢見心地、初期の頃から続くポストパンク性、そして前作からより際立つようになったネオアコ / ギターポップの温かさ。それらを優しく混ぜ合わせた楽曲たちは、昔の面影を感じさせつつもより洗練されたサウンドと響きを有し、彼らが確実に進化していることを痛感させる。特に「Don't Fade Away」や「Tough Love」は初期を強く思い出させる楽曲ながら、ダスティン・ペイサーの歌唱表現とバンドの細かなテクニックによって奥深い響きと立体感のある音楽に仕上がっている。きらきらと揺れるギターの心地良さと甘い微睡みは、真っ青な夏の情景にもよく似合う。

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bar italia 『Tracey Denim』

〈World Music〉から名門〈マタドール〉へ移籍後初のリリースとなる本作は、メンバー自身がプロデュース、レコーディング・エンジニアを務め、ミックスはビョークやデペッシュ・モードらを手がけるマルタ・サローニが担当。ジョイ・ディヴィジョン以降のポストパンクの系譜に連なる低体温でタイトな音像に詩的な歌を乗せたダークな世界観、そして随所から漂うクレイジーな香り。それだけで胸を鷲掴みにされるのだが、アルバム中盤では甘美なポップ・センスを発揮した楽曲も連なり、「Friends」では『In Utero』期のニルヴァーナを思わせるグランジ・サウンドまで鳴らす。最後にはまた新しい作風で、壮大なサウンドスケープで美しく終焉を飾る。姿が明かされても未だ謎の多い彼ら、掴み切れないその魅惑に引き込まれるばかり。

BANDCAMPページ

Lillies and Remains 『SUPERIOR』

日本のポストパンク系のバンドのなかでもひときわ海外のサウンドとの親和性が高く、コアなファンを掴んで離さないリリーズ。本作は約9年ぶりのアルバム・リリースとなるが、モリッシーやジム・リードを想起させるKENTの甘くミステリアスなヴォーカルと歌うように鳴るKAZUYAのテクニカルなギター、そして彼らのポストパンク / ニューウェイヴへの美学はけして色褪せない。一方で、ベース、高松浩史(THE NOVEMBERS)、ドラム、宮内告典という布陣から成るリズム・セクションは、楽曲に重厚感と躍動感を生み出し、大胆に取り入れられたシンセとともに楽曲を色鮮やかに染め上げる。ブライアン・イーノ&ジョン・ケイル ”pinning Away” という独特なカヴァー選曲も含め、また一つ深みを増した彼らの“らしさ”が更新されてゆく。

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この記事の筆者
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宮谷 行美 (Pikumin)

音楽メディアにてライター/インタビュアーとして経験を重ね、現在はフリーランスで執筆活動を行う。坂本龍一『2020S』オフィシャル・ライターを務めたほか、書籍『シューゲイザー・ディスクガイドrevised edition』への寄稿、Real Sound、日刊サイゾーなどのWebメディアでの執筆、海外アーティストの国内盤CD解説などを担当。

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河村 祐介

1981年生まれ。ビヨンセとは1日違いで時差的に多分ほぼ一緒。渋谷区幡ヶ谷出身。2004年~2009年『remix』編集部で丁稚から編集者へ、LIQUIDROOM勤務やのらりくらりとふらふらとフリーを経て、2013年よりOTOTOY編集部所属、現在編集長。テクノあたりとダブステップあたり、ルーツ・レゲエ〜ダブあたり(そのあたりでライナーノーツなど多数)、その他では酒あたりと本あたり。

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