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"REVIEWS"は「ココに来ればなにかしらおもしろい新譜に出会える」をモットーに、さまざまな書き手がここ数ヶ月の新譜から9枚(+α)の作品を厳選し、紹介するコーナーです(ときに旧譜も)。高岡洋詞による“ポップ・ミュージック”と題して、5月から7月までの、SSW、バンド、アイドル、国内のここ3ヶ月ほどのエッセンシャルな12作品をお届けします。
OTOTOY REVIEWS 081
『ポップ・ミュージック(2024年7月)』
文 : 高岡洋詞
前から名前は知っていたが、恥ずかしながらしっかり聴いたのは初めて。世界各地にインスピレーションを求めたエレクトロニック・ビートから周到に音響設計されたリリックに至るまで、意味とエモーションを徹底的に排したアゲと酩酊全振りの快楽賛歌をアルバム1枚、35分にわたって展開する潔さに圧倒された。 “Hacha Mecha” で祭囃子を取り入れたのは、250の『Ppong』への回答にも聞こえる。いちばん気に入ったのはラストの “Let's Go” で、2分半にも満たない曲だが10分くらい続いてほしい心地よさ。ほぼ「Let's go!」と「Stop!」しか言わない歌詞とともにナンセンスの向こう側に突き抜けた感じがあり、電気グルーヴを経由して、石野卓球が高校時代に影響されたというホルガー・ヒラーの名言まで思い出させる。興味のある方は検索してみてね。
“スペル” (「呪文」の和訳だ)の「静かに 静かに」という歌い出しに一瞬 “里の秋” を連想した。聴き進めればもちろん違うのだが、何を歌っても音楽的に響く折坂の歌声には、童謡や民謡と地続きの感触がある。 “人人” や “努努” のオノマトペのプリミティヴな快楽。アパートを更新しなかったり、おたまの持ち手のプラが溶けたり(拙宅でも昨日起きた)、パンにジャムを塗ったりといった日常の描写と、飛躍のある思念が交互に出てくる歌詞の稀有なリアリティ。そこを詰めすぎず、あえてラフなまま完成としたようなシンプルで温かいムードが快い。その中に「私は本気です/戦争しないです」( “正気” )、「しいて何か望むなら/全ての子供を守ること」( “ハチス” )といったマニフェストがさらりと浮かび上がる。「刺さる」とはこのことを言うのだろう。
88risingでの海外進出を経て初めてのアルバムなので、言うまでもなく作家陣は多彩になったし、ここ数年の経験は歌詞にも反映されている。 “Toryanse” や “Essa Hoisa” など現代のジャポニスム需要に応える曲もオール英語の “Superhuman” もあるが、 “オトナブルー” の姉妹作とも言うべき歌謡曲テイストの “Hero Show” など、欧米に合わせすぎない歩留まりが絶妙に適度。マニー・マークとの “Forever Sisters” もマイペース感が横溢する。自己名義でも客演でも常にかっこいいタイのラッパーMILLIが参加した “Drama” と、ファンの目線を取り込んだ “Arigato” の創意工夫よ。力強さを増したSUZUKAのヴォーカルが全編にわたって牽引力になっている。ツアーまたツアーで多忙をきわめる日々だと思うが、どうか体には気をつけて。
フリー編集者/ライター。 近年はインタヴュー仕事が多いです。 https://www.tapiocahiroshi.com/
1981年生まれ。ビヨンセとは1日違いで時差的に多分ほぼ一緒。渋谷区幡ヶ谷出身。2004年~2009年『remix』編集部で丁稚から編集者へ、LIQUIDROOM勤務やのらりくらりとふらふらとフリーを経て、2013年よりOTOTOY編集部所属、現在編集長。テクノあたりとダブステップあたり、ルーツ・レゲエ〜ダブあたり(そのあたりでライナーノーツなど多数)、その他では酒あたりと本あたり。
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