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⇱ わたしたちとおしゃべりしよ?──illiomoteが映す世の中の歓喜と悲哀 - OTOTOY


2023/03/29 18:00

わたしたちとおしゃべりしよ?──illiomoteが映す世の中の歓喜と悲哀

MAIYA(Gt / Sampl) / YOCO(Vo / Gt)

笑ったり、怒ったり、泣いたり。1時間ちょっとのインタビューで感情がコロコロと変わっていくilliomote。MAIYA(Gt / Sampl)とYOCO (Vo / Gt)は、ひとりの人間として日頃感じていることや、バンドの活動スタンスを赤裸々に話してくれた。 もちろん、新作『HMN</3』についても。大衆居酒屋で話しているかのような陽気なテンションだったけど、よく話を聞くと、ひとつひとつの物事に対して、すごく真面目に向き合っているのだ。だからどんな質問をしても、ハッキリと自分たちの意見を伝えてくれたのだろう。でもふたりの根っこは、すごく謙虚で繊細だ。illiomoteにどうしてこんなにも惹きつけられるのか。その理由がここにある。

ロック色が増した、illiomoteの新作!


INTERVIEW : illiomote

ふたりの地元、池袋のコミュニティバス「IKEBUS」の車内で撮影した宣材写真の話が、「車輪が多い」「速度が遅い」「バスなのにトラックに回収される」「のぞき坂をチャリで走り降りるのを下から撮ってもらおうとしたけど怖すぎて諦めた」とどんどんそれていく。インタビュアーとの話とふたりの間の話がすごいスピードで切り替わる。2年ぶりに会ったilliomoteは変わらずおしゃべり好きで、正直で、クソまじめで、溌剌と怒っていた。

『HMN</3』は『ヒューマン』と読む。ハートマーク(<3)にスラッシュ(/)を入れてブロークン・ハートというわけ。とてもilliomoteらしいタイトルである。こんな世の中で底抜けにハッピーでいられるわけがない。でも、やるんだよ。「俺らの音楽を聴け」という言い切りに憧れつつも、「聴くよ」「話そ?」という真逆のスタンスが自分たちだと打ち明ける。ふたりが標榜する「ハッピー・ポップ」は祈りのようなものなのかもしれない。

取材・文 : 高岡洋詞
写真 : MOMO

「楽しいこの空間を共有しようよ!」みたいなマインド

──まとまったリリースは1年ぶりですね。

MAIYA(Gt / Sampl):気づいたら1年経ってました。

YOCO(Vo / Gt):あっという間ですよね。もっといろいろできたらよかったんですけど。

MAIYA:生活があったから(笑)。カネないんで。

YOCO:あとは、おととしから去年にかけて、アニメの挿入歌をやらせてもらったり(『BIRDIE WING』に “Take a chance”を提供)、UberEatsの5周年記念ムービーの音楽を担当したり、ELAIZAさんに曲提供(アルバム『失楽園』に “愛だの恋だの” と “Paradise Lost” を提供)したり……。

5周年記念ムービー|Uber Eats
5周年記念ムービー|Uber Eats

MAIYA:めっちゃ案件があったんですよ。

YOCO:仕事として音楽を作るのがはじめてだったから手探り状態で、今までいた事務所を離れて新たに動き出したこともあって、本筋の活動とのバランスが難しくて迷走していました。

MAIYA:そうだね。精神的にけっこう追い込まれてました。やっと安定してきたんじゃない? 最近。

YOCO:“everyone likes” はちょうどその時期に作ったんで、暗いんですよ。「もうできないよ~、ゴールが見えないよ~」みたいな(笑)。納期のある仕事があったんですけど、とりあえずこれ作っちゃわないと希望を失いかねないぐらいのテンションだったんで、1回そっちをほったらかして「あ~作れた……大丈夫だった」みたいな。

MAIYA:曲が暗いから、トラックはその分アゲ~! にしてるんです。

──「次も作れる」という自信はなく、毎回わりと不安になるほうですか?

MAIYA:かっこいいのができないと自信にならなくない? 「もうなにもできないわ。自分まじ才能ない」みたいに思っちゃう。

YOCO:性格的なこともあって、いつも不安なんですよね。できたものにも「うーん、自分は好きだけど……」ってなっちゃう。「自分、好きなんでOK!」ってやりたいんですけどね。

MAIYA:「かっこいいっしょ、俺らのEP」みたいな(笑)。「俺らが時代切り開くから、みんなついて来いよ」みたいな人もいるじゃないですか。あの自信がうらやましい。堂々と言えたら、みんなついて行こうって気になるだろうし。

YOCO:自信がなくはないんだけど……。

MAIYA:自信満々にはなれない。

YOCO:究極的には、まぁ、謙虚だよね(笑)。これはわたしたちの師匠の受け売りなんですけど、「おまえたちは長い音楽の歴史のなかで、先人たちが残してくれたものに乗っかって表現してるだけなんだぞ」って。

MAIYA:忘れずにいる言葉だよね。

YOCO:本当にそう思うんですよ。自分がゼロから生み出したオリジナルなものなんて1個もないから。

──性格由来だとしたら、仮に今後大成功しても、毎回「これでいいのかな?」と不安になっちゃうということですね。

MAIYA:そうそう(笑)。絶対それはなる。もしめっちゃリスナーがついてくれても、まわりがどんなに「最高だよ!」って言ってくれても、なにか出すたびに「大丈夫かな……」ってなっちゃうよね。時間が経ってから「結果的にあれでよかったよね」って思うことはありそうだけど。

YOCO:時間が必要だと思います。「やばいっしょ、これ」みたいに瞬時に確定することはできない(笑)。

MAIYA:うらやましい、本当に。これ言うのあれだけど、やっぱ自信満々な人たちは、男の子のほうが多い気がします。そういうふうに育ってんのかなって。

──育てられ方の違いは正直あるでしょうね。

MAIYA:まわりの女の子のアーティストも、みんななんだかんだ謙虚ですよ。「この作品かっこいいんで」とは言うけど……。

YOCO:あれはニュアンスが違う気がする。「うちら、ありのままで完璧っしょ!」とか言うけど、あれは自信過剰っていうよりは「みんなで高め合っていこう」みたいな精神の表れだと思うし。

MAIYA:「認めてこ! うちらのこと」みたいな。

YOCO:だから「やばいっしょ、うちら」って本気で言い切れるかっこよさが欲しいんだよね。世の中の意見ってさ、だいたい0か100じゃん。中庸ってあんまり支持されないから。

MAIYA:だから強いほうにみんな憧れるんじゃないかな。

──どうなんですかね。楽しそうにしていればいいんじゃないかという気もします。そうすれば「あのふたりについて行ったら、なにか楽しいことがありそう」と思ってもらえるというか。

YOCO:手放しでただただ楽しむ、みたいなことはめっちゃ重要だと思ってます。世の中のこととか音楽のこととか文化のこととか、表現者としてはしっかり考えてかなきゃいけないけど、悩みや苦しみで頭がいっぱいになっちゃうぐらいなら「楽しいこの空間を共有しようよ!」みたいなマインドが大事だなって。かといって、ただお気楽な人間では絶対にないから、厳しさとかつらさとかいろいろあった上で「ジェンダーも年齢も仕事も関係なく、みんなで一緒に楽しも!」みたいな。

──はじめてインタビューしたときに「ハッピーポップは単純なものではない」と話していたのをよく覚えているので、さっきYOCOさんが言ったように暗さもあるけれど、それも広義の楽しさの一部と捉えています。ホームページのコメントにも、「人間らしいでしょ??」(MAIYA)とか「私なりのワクワク」(YOCO)とあるし。

MAIYA:うん、うん。どうしても「俺らについてこいよ!」みたいなほうが目立つけど、うちらにそれは合わないから。

YOCO:もっと声デカくしてく? 主張することは同じなんだけど、物理的に声をばりデカくしていくみたいな。

MAIYA:クソデカで圧倒しちゃうのは大事だよ(笑)。

YOCO:「悲しいのもなー! うれしいのもなー! 全部ハッピーなんだよー! 人生サイコー!」。

MAIYA:♪ジャンジャンジャン……ってそのまま曲に入る(笑)。

──メディアは物事をわかりやすく伝えようとして、情報を足し引きしてデフォルメしていきますよね。それは大事なことでもあるけれど、こぼれ落ちるものも出てくる。MAIYAさんの「人間らしいでしょ??」というコメントは、人間の営みとしては納得だけど、「商品」としては扱いにくいですよね。

MAIYA:そうですよね(笑)。わかります。

──商品としては「楽しくてかわいいハッピーポップユニット!」のほうがわかりやすくて強いという。

YOCO:そうなんですよね……。

MAIYA:商品でいいんですよ。うちらそれで商売やってるんで。でも自分自身にだけはそれをやっちゃダメだなって思ってます。

YOCO:そうだね。抗いは続けるよね。

MAIYA:メディアには勝手にやってもらえばいい。うちらが自分にウソつかないで正直にやれてさえいれば。アーティストって、すごく売れてる人もみんなそう思ってると思います。「本当はもっといろいろあるけど、ま、自分が自分を見失ってなければいいか」みたいな。

YOCO:伝わる人には伝わると信じてね。

MAIYA:伝わってるよ。大丈夫。

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高岡 洋詞

フリー編集者/ライター。 近年はインタヴュー仕事が多いです。 https://www.tapiocahiroshi.com/

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梶野 有希

1998年生まれ。誕生日は徳川家康と一緒です。カルチャーメディア『DIGLE MAGAZINE』でライター・編集を担当し、2021年1月よりOTOTOYに入社しました。インディーからメジャーまで邦ロックばかり聴いています。

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