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2024/03/13 18:00

なぜハシリコミーズはスペシャルなのか──深化の途中で育つ、揺るぎない向上心を探る

ハシリコミーズ

ハシリコミーズのニューアルバムを一聴すると、惹かれる理由がすぐに分かった。フォーキーでジャジーでパンキッシュな音像と、シニカルでありながらどこかずっと諦念を感じる日本語詞との混ざり合いがとても心地いいのだ。例えば収録曲“Tokyo city”はメンバー3人の生き生きとしたシングアロングや楽曲全体に蔓延するスウィングに揺れながらも、彼らにとっての東京は内股で歩くような街で、特段輝いて見えるわけでもないらしい。“たまには下と比べましょう”はさわ(Dr)のスクリームからはじまり、そのハイ・テンションを保っているのに、ヴォーカルは「時々下をみようよ」なんて歌っている。なるほど。だからハシリコミーズに惹かれるのか。この替えの効かない安心感はどのように生まれるのか?メンバー3人に話をきいた。

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INTERVIEW : ハシリコミーズ


怒りや反抗ではなく、日常で感じる嫌なことや疑問を1テーマでシンプルなロックンロールに乗せて放つバンド。そんなイメージを持っていた男女スリー・ピース・バンドのハシリコミーズ。そんな彼らもリリースを重ねて今回のニューアルバム『I Love you! next to music』ではソウルやファンク、80年代ニューミュージックの影響を感じさせる楽曲も聴かせてくれる。雑誌『装苑』にピックアップされたり、ヴォーカルのアタルのイラストがBEAMSとコラボしたり、画家の奈良美智がSNSで紹介していたり、新作にも収録されている“本当の綺麗がわからない”はカップスタープロジェクトとのコラボ曲だったり──多方面から注目を集める彼らは、なにがそんなにスペシャルなのか? 音楽はもちろん、ちょっとお目にかかったことのないスイートで自然体な彼らの魅力をニューアルバムの話を軸にお届けしよう。

取材・文:石角友香
写真:つぼいひろこ

とにかくいまを必死にできたら

──今回で3枚目のアルバムですが、改めて結成の経緯からお聞きしてもいいですか?

アタル(Vo):結成はここふたり(アタルとあおい)が幼馴染で、中学の時は陸上部の先輩後輩だったんです。最初は僕ひとりでハシリコミーズとしてYouTubeに曲を上げてたんですけど、流れからあおいちゃんと一緒にやろうってなって。で、さわちゃんがライヴハウスの店長の紹介で入って自然な流れでこの3人になりました。

──アタルさんとあおいさんは共通して好きな音楽があったんですか?

あおい(Ba):小学校の時からお互い別のバンドやってて、中学の陸上部をきっかけにより関わるようになって話してみたら好きな音楽がすごい似てて。「じゃあ一緒にちょっと遊びでやってみようよ」って。

──というのもみなさんの若さからすると初期の曲はびっくりするぐらいオーセンティックなロックンロールだったので、なんの影響か興味があったんです。

アタル:流行りっぽい音楽より古い音楽を好んでいたけど、あおいちゃん以外では周りにそういう友達があんまりいなかったですね。

あおい:アタルくんも私もピーズとか好きで。私は親の影響ではっぴいえんどとか大瀧詠一さん、山下達郎さん辺りも好きで。アタルはクラッシュとか?

アタル:そうですね。好きです。小学校の時にコピバンをしてて。

あおい:和訳してたよね。

──和訳というのが気になるんですが。

アタル:(笑)。やりたいけど英語は喋れなかったし、なんか英語でクラッシュやると学校のバザーで披露するときにすごく浮きそうだなと思って。で、クラッシュの曲を小学生の生活みたいなのに置き換えたバージョンの歌詞を作って。和訳というか替え歌みたいなのを(笑)、歌ってましたね。

──初期の曲の雛型は和訳の頃からあったんですね。

アタル:そうですね。遊びでやってたんで当時なにを思ってやったかは全然忘れちゃいましたけど。

アタル(Vo)

──さわさんは、ふたりが中学生でバンドはじめた頃に加入したんですか?

さわ(Dr):あ、全然。私が19歳で、あおいちゃんが18歳、アタルくんが17歳の時にはじめて会いました。

──ライヴハウスの人の紹介っていうのは?

さわ:「おもしろい歌を歌っている男の子がいるんだよ」って店長に言われて、「はあ…」って感じだったんですけど、私も暇だったというのもあって(笑)。それでまずアタルくんと会って、なんとなく一緒にスタジオ入ってみようかって話になって。で、そのスタジオの日にあおいちゃんともはじめて会って一緒に入りました。

──どういうバンドにしていこうという話は3人で特にしてないんですか?

アタル:いや、ちょっとして。でもそれもコロコロ変わってます。ただ根底はなるべく、かぶらない、目立ちたい、いまやってないことをやろうっていうのはずっとあって。それでいろいろしくじったりもしましたけど。

──小学校からやってるから無意識かもしれないですけど、アタルさんのヴォーカル・スタイルは自然に見つけていった?

アタル:僕がすごい気分屋なので、去年と今年で目指すものが違うんですよ。やっぱり最初はクラッシュが好きだったので、ハシリコミーズでも初期の方はガレージっぽかったりパンクなことやってみようとか。でも背伸びしていろんな音楽を聴くと「ああいうふうにもなりたい」って繰り返しながら広がっている感覚で。ずっと同じ人を目指すことはあんまりなくて、とりあえずいろんなことをやりたいなという。

さわ:ファーストとセカンドの時のアタルくんの歌と、今回の歌とだと全然印象違うかなと思います。

アタル:そうなのかな。

さわ:全然違う。

──セカンドから今回までの間にバンドかアタルさんになにがあったのかなって。

さわ:結構変化のなかでアルバム作れたよね?

アタル:そうなのかな。そうかもしれない。

──セカンドは特に同じテーマの曲が入ってたり、1曲がすごく短かったり。セカンドまでの音楽性でやり切った感覚があった?

アタル:うーん、嫌になった。

──嫌になった?(笑)

アタル:なんていうんだろう? 小道具みたいな曲ばっかだったんで、「嫌だな」と思って。バラエティ豊かと言えるかもしれないですけど、ちゃんと聴きごたえがある曲を目指したいなと思って。

──1曲1テーマで短いスタイルは、ネタみたいな気持ちがあったんですか?

アタル:はい。当時はネタみたいに書こうと思ってなかったんですけど、勝手にそうなっちゃって。でもいま(過去作を)聴いたりすると飛び道具というか、全然曲として聴こえない。それが嫌になっちゃったという変化がちょっとあったかもしれないですね。

あおい:やってみたいことが前のアルバムを作った時よりも多くなったっていうのはあるかも。

──こういうジャンルに行きたいとかじゃなくて、なにを聴かせたいかが変わってきたってことですね。

アタル:うん。でもまだ全然足りないと思うんです。終わりはないですけど、セカンド作った時も「いまやりたいことができている」みたいなことを言った覚えがあって。いま思ったらバカだなと思うんですけど。でも当時はそう思っていたのに、いまもまたそれが過去になっちゃってる。たぶん今作もいずれバカだなと思う時が来そうだなってすでに感じてるんですけど、とにかくいまを必死にできたらいいなと思います。

──ハシリコミーズの場合、「次はどういうのくるんだろう?」っていう楽しみの方が大きいというか。

アタル:それは嬉しい。

さわ:めっちゃ嬉しいね。


この記事の編集者
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梶野 有希

1998年生まれ。誕生日は徳川家康と一緒です。カルチャーメディア『DIGLE MAGAZINE』でライター・編集を担当し、2021年1月よりOTOTOYに入社しました。インディーからメジャーまで邦ロックばかり聴いています。

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