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⇱ もっとラフに、そして自由に──アンバランスなApesが赤裸々なロックに辿り着くまで - OTOTOY


2024/06/11 18:00

もっとラフに、そして自由に──アンバランスなApesが赤裸々なロックに辿り着くまで

先週、1年ぶりにApesのライヴを観た。元のスタイルは残しつつ、アップデートを重ねながら前へ進んできたことがすぐにわかった。音源で聴くとオルタナティヴな印象がまずあるが、ライヴではガレージやグランジの要素がグッと濃くなっている。ジャキジャキとした硬めのカッティングと粒たちのいいリード・ギター、どっしりとしながらも繊細なベースが絡み合いながら、そこに坂井玲音のドライで力強いヴォーカルが乗っていく。かっこいいバンドの条件みたいなものがあるとしたら、まさにこんな感じだろう。今回リリースされたメジャー・ファースト・EP『WANDERS』を一聴してすぐ、Apesにいま大きな変化が訪れていることは想像がついていた。しかし、まさかここまでだったとは。Apesは間違いなく、ますますおもしろいバンドになっていく。今作と直近のライヴでそう確信した。(編)

Apesがメジャーへ羽ばたく1枚


INTERVIEW:Apes

Apesのメジャー・ファーストEP『WANDERS』が、6月11日にリリースとなる。彼らにとって初のフル・アルバム『PUR』から約1年後に届いた今作は、1曲目の"Mustang"を聴いた時点で「あれ、全然違うぞ?」と思った。自由で、どこまでも飛んでいきそうな跳躍力を持っている印象があり、ここまで変わるのか! と驚きもしたが、そもそもApesってこういうバンドでもあるよなと納得もした。孤高さえ感じられる珠玉の『PUR』を作って以降、彼らにどんな変化があったのか? 作品についてやバンドのいまのモードも伺いつつ、Apesってこういうバンドなんだよという人間味がより伝わるインタビューになったと思うので、前作のインタビューと比べて読んでみてもおもしろいかもしれない。

インタヴュー&文:峯岸利恵
写真:斎藤大嗣

もっと好きに書いた方が健康だなという思考になった

──今作『WANDERS』は、『PUR』とはまたガラリと雰囲気が変わりましたね。

坂井玲音(Vo/Gt):リリース・ツアーなどが終わって、改めて『PUR』を聴き直してみたら、お堅いアルバムだなと思ったんですよね。録り方もセクション毎に区切って録っていたので、バンド感が感じられないなと。なので、もうちょっと砕けたというか、エネルギッシュな作品を作りたいよねという話を去年からしていて、6月頃から曲を作りはじめていました。でも、コンセプトなどは全然なくて、ぼんやりとEPを出すか~くらいに考えていました。

村尾ケイト(Ba):『PUR』はコンセプトがしっかりと決まっていたので、良くも悪くもファースト・アルバムだなという感じはありましたね。なので、今作のレコーディングは、スタジオでみんなでせーので音を出して、バンド感が出るように試しました。真面目なのもそれはそれで好きなんですけど、今回はのびのびとやれました。

アラユ(Gt):周りからも「Apesってライヴバンドだよね」と言われることが多いので、今回はその辺りを意識したところはあります。

坂井:いままでは、スタジオにある良い機材や楽器を使わせてもらっていたんですけど、今回は機材もほぼ自分たちのを使って録ったんですよ。なので、今回は本当に4人の音しか鳴ってないですね。

──じゃあ、ライヴに近い感覚で録っていけたんですね。

坂井:上裸で録ったりもしましたしね(笑)。 今回は事前に、3テイクまでしか録らない! という縛りを設けていたんですよ。なので、2テイクで良いの録れなかったら、気合い入れる為に全員で上裸になってました(笑)。

アラユ:"GORILLA"と"Bear in mind"は上裸だったね(笑)。

──ははは! かなり男気溢れるレコーディングだったんですね(笑)。前作の楽曲制作からDAWを起用したとのお話をされていましたが、そこは今作も変わらず?

坂井:作り方自体は変えていないです。前回はデモのデータをふたりに渡して、各々がフレーズを作っていくというスタイルだったんですけど、今回はデモを送ったらみんなでスタジオに入って、でっかい音を出しながら確認するという方法を採りました。

──それも作品が持つライヴ感に通じているのかもしれないですね。

坂井:アート・ワークについても、前回は綿密に話し合って決めて行ったんですけど、今回は撮影当日までなにをするのか分からないという状態で臨んだんですよ。カメラマンと一緒に、とりあえずゴリラのマスクを2枚買って、適当にブラブラ歩いて、俺とアラユがマスク被って走って……っていう、完成形が全く想像つかない撮影でしたね。でも、なんかそういう意味の無さもおもしろいなと思えたし、その精神性は今回の曲作りにも通づるものかもしれないです。『PUR』の時は、アルバムを作る為に曲を書いてましたけど、今回はたくさん作れた曲のなかから好きな曲をほぼなにも考えずに選んでいったので。途中から、ほぼふざけてましたしね。

──『PUR』のインタヴューをした時に、2022年はほぼ曲を書けなかったと話していましたが、今作に至ってはそれとは真逆ですよね。なにか心的変化があったんですか?

坂井:いままでは、アラユのギターはこのチューニングをしがちだからこういうコードでやらないとダメだなとか、ケイトはこういうベースを弾くからやりやすいようにしようとか、そういう風に相手に合わせた縛りを設けながら曲を書いてたことに気付いたんです。でも、もっと自分がやりたいように好きに書いた方が健康だなという思考になってからは、良い意味でなにも考えずに曲を書けるテンションになりました。

アラユ:『PUR』を作ったことで、これまでの自分のエモっぽいチューニングだったり、ケイトのやりたいことだったりが一旦完成したんですよね。そこから僕ら自身も次のフェーズに入った感覚はあります。

村尾:間違いなくターニングポイントだったよね。そこからバンドの空気感はラフになっていったけど、玲音さんが出してくる曲は、玲音さんがやりたいようにやっているといえども、全部Apesの曲になっているのは凄いなと思います。違和感が全然ないので。

──玲音さんとしても、自分がやりたいことと、Apesでやりたいことの乖離は感じなかった?

坂井:ぶっちゃけてしまうと、今回は「そうなっちゃった」という感覚が大きいです。というのも、今回は僕が出したデモから、構成やアレンジが大きく変わることがあまりなかったんです。そのままふたりが作ったフレーズを足して、歌詞を付けて録っていったんですけど、それってあんまり良くないよなぁと思っていて。丁度最近、「それってふたりはつまんなくない?」っていう話をしたところなんですよ。サポート・メンバーではないんだから、「これがApesの曲だ」と思うのではなく、ふたりならではのフレージングだったり、曲に対するアイデアを出してくれたらもっと良いのになとは思ってます。もちろん、今作の出来上がりに不満はないし、とても良い作品ができたなと思っているので、それは今後の課題かなと……。ふたりとも、課題ですよ! もうちょっとちゃんとしてくださいね!(笑)

坂井玲音(Vo/Gt)

村尾:この前カフェで、3、4時間この話をしていたんですよ。険悪な感じでは全くなくて、いつも通りの雰囲気で話していたんですけど。それもあって、今作が出来て以降、本当に最近なんですけど、良いモチベーションになっている感覚はあります。僕らも頑張んなきゃなと思いましたし、自分はもっとこうしたい! という話をしやすい環境になった……と言うと、いままでそうじゃなかったのかって思われそうですけど……。

──いや、上裸で一緒にレコーディングするバンドは絶対に仲良いんで大丈夫ですよ(笑)。

坂井:変なとこで気ぃ遣うんですよね。気の遣いどころが下手すぎる! そういうところは気にするのに、1年半車の免許取らずに俺ひとりに運転させるのは絶対に違うと思う!

全員:(笑)。

村尾:助手席で寝ててすみません!(笑) 確かにいままでは曲を全部作ってくれているというリスペクトと気遣いを混同させてしまっていたんですけど、今作はそれを取っ払うきっかけになったように思います。

アラユ:俺はもはや、元々もらった曲をぶっ壊してやりたい! という気持ちすら自覚してなかったんですよね。やりづらさも特に感じたこともなかったので……今は違いますけど!

この記事の編集者
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梶野 有希

1998年生まれ。誕生日は徳川家康と一緒です。カルチャーメディア『DIGLE MAGAZINE』でライター・編集を担当し、2021年1月よりOTOTOYに入社しました。インディーからメジャーまで邦ロックばかり聴いています。

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