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『Underlight & Aftertime』がリリースされてから約1ヶ月半後、downtへの取材が決まった。OTOTOYでは『SAKANA e.p.』(2022) のリリース時に一度インタヴューをしているが、自分が編集を担当するのは今回が初。直前までどこかそわそわしていた──そして迎えた当日、雨空の下で撮影を終え、インタヴューがはじまる。「ストイックで素直なバンドだ」とすぐに思った。直接語られる言葉の端々には生々しい不満だったり、渦を巻く不安定さがあり、現状と過去に対する遺憾をまっすぐに話してくれたからだ。しかしその「もっとできる」という感情は自身への期待であり、必要不可欠な希望であるはずだ。downtは決して器用なバンドはないけれど、回り道をしながら現実に向かって深みを増していく。初のフル・アルバムはその過程である。彼女たちもまだ想像していない未来に向かって、話を進めていく。(梶野)
再録を含む全11曲が収録された、downtの現在地
『Underlight & Aftertime』を聴いて感じたのは硬質さだった。初期downtの魅力のひとつは音像から浮き上がる富樫のギターとヴォーカルのある種の柔らかさだったが、今作には、サウンド面のみならず戦いを挑むような強さがある。ライヴも然り。2021年末に月間15本を超えるライヴを行っていたときの切迫感から、一転とても楽しそうだった2022年7月の『SAKANA e.p.』のリリース・ツアーを経て、今作リリース後のライヴは精緻で、聴く側に音楽を突きつけるかのようだ。富樫のヴォーカルは力強さと生々しさが増し、バンドは “3本足” でステージ床を踏みしめている。昨年の『III』から今作の完成に至るまで、制作に苦戦したことは漏れ聞いている。そこではなにが起き、彼女たちはなにを掴み取ったのだろう。(高田)
取材 : 高田敏弘
文 : 梶野有希
写真 : 斎藤大嗣
──1年8ヶ月ぶりの東名阪リリース・ツアーが終わりました。downtはライヴごとに目標を決めたりするんですか?
河合崇晶 (Ba.、以下、河合) : 目標というより課題へ向けたアプローチの積み重ねだね。バンドに課題があるのは明白だし。その課題の解決に向けて、じゃあ今日はこれを意識しようとか。と言っても丁寧な演奏になるだけならそんなものにチケット代払ってみてもらうとかありえない、ライヴは予想外のものをみせて当たり前だと思っている。どれだけ等身大をみせられるか、そして “神” にならないといけないとも思っている。その相反するふたつがライヴには必要で、そこをどう表現するかを考えてる。
──課題があるということは理想像もある?
富樫ユイ (Gt./Vo.、以下、富樫) : 理想像はなんとなくあります。それが絶対的なものかと言われると少し違うような気もするのですが。ただ、感覚的に良いと思ったものにも常に疑問を抱くようにしてます。「いやでも本当に良かったんだろうか」って。
河合 : それは俺もある。良し悪しの判断ってすごく曖昧なので、「そもそも良いってなんだろう」とは考える。そういうときは俺がdowntをはじめる前にみたバンドを思い返したりする。最近共演したdeathcrashとかPswingsetはメンバーにも伝わりやすい。
──ロバートさんは?
Tener Ken Robert (Dr.、以下、ロバート) : ドラムだけでも課題だらけです。でもそれこそdeathcrashのライヴが結構衝撃的だったので、ああいうのをやりたいなと思っています。すごい強く印象に残ってます。
──downtはライヴを経て変化しているバンドだと思いますが、ご自身ではいかがですか?
河合 : 変化していると思われてることが結構驚き。アレンジはなにも変えてないので。でもそう思ってもらえるってことは、バンドの根本的なものが勝手に変わってるのかも。
──すこし振り返ります。2022年8月に『SAKANA e.p.』をリリースして、2023年初頭は次の作品に向けて曲作りをしていると伺っていました。その後『III』をリリースするというアナウンスがあり、EPかアルバムが来るかと思っていたら、6月にリリースされた『III』は2曲入り、実質 “13月” のみの作品でした。この期間はなにが起きていたんですか?
河合 : 俺たちも3曲プラス “前奏” 的な曲を2曲くらいでEPを出すつもりだったけど、曲が全然できなかった。
富樫 : うん、本当にできなかった。曲のネタみたいなのはあったんですけど。私は『SAKANA e.p.』ができたとき大満足していたんです。でもその後は……、なんていうのかな。サウンドがうまくいかなかったり、私が作るオケと歌がマッチしなかったりが続いて。ずっとバンド・サウンドに落とし込めなかった結果、“13月” しか作れなかったんです。
河合 : 他の曲もレコーディングまでしたけど。全然ボツだった。
──富樫さんは『SAKANA e.p.』で感じた満足感のまま、その後もいける気がしていた?
富樫 : そうですね。その当時はそう思ってました。
河合 : 俺は思ってなかった。最初のアルバム『downt』(2021) のときはリスナー、リスナーと言っても自分なんだけど、そことのコミュニケーションは上手くいってると思っていた。でも次の『SAKANA e.p.』はコミュニケーションが中途半端に一方通行な気がした。
富樫 : 多分そこにすごい差が生じていたんでしょうね。私が持ってくるデモがちょっとチグハグだったりして。それが原因だったのかも。
ロバート : 僕は当時そこまでの判断はできてなかったと思いますね。良し悪しがちゃんとわかっていなかったというか。僕もたぶん判断が浅かったんだと思います。
河合 : そんなことないと思うけど。曲のバランスとかクオリティーは良かったから。それよりもバンドとしてなにをどう表現したいのかっていう、アートの話がぼやっとしたまま進んでしまったんだと思う。
富樫 : 私がちょうど『SAKANA e.p.』の制作タイミングでエモを知ったんですよ。レーベルが〈ungulates〉でまわりにそういうジャンルを好きな人たちが集まっていたので、自分のなかではかなり新鮮でした。「とにかくこんなギターが弾きたい」という気持ちが先行してたかな。
河合 : いや、それはそれで全然よかったんだよ。俺は「自分が聴いてどう思うか」を判断基準にしているけど、『downt』は気持ちよく聴けたんだよね。でも『SAKANA e.p.』は一歩足りない感じがしたし、もっと勢いがほしかった。『downt』はわりと音数も減らしていて、聴き手側に一歩踏み込んでもらってはじめて成立するというか、そこがおもしろいと思ってた。『SAKANA e.p.』は聴き手が踏み込もうとしなくても曲を押し付けてくる、無意識に入ってくる感じがあって、だとしたら全然詰め込みが足りないと思うんだよね。中途半端というか、言ってることとやってることが嘘ついてる感じで。だから次はもっと踏み込んで聴けるようなおもしろい音楽を作りたくて、その試行錯誤をしていたのが『III』の制作。
Director。東京都出身。技術担当。編集部では “音楽好き目線・ファン目線を忘れない” 担当。
REVIEWS : 117 インディ・ポップ〜ロック (2025年10月)──OTOTOY編集部(石川幸穂、菅家拓真、高田敏弘、TUDA、藤田琴音)
REVIEWS : 113 インディ・ポップ〜ロック (2025年10月)──OTOTOY編集部(石川幸穂、菅家拓真、高田敏弘、TUDA、藤田琴音)
1998年生まれ。誕生日は徳川家康と一緒です。カルチャーメディア『DIGLE MAGAZINE』でライター・編集を担当し、2021年1月よりOTOTOYに入社しました。インディーからメジャーまで邦ロックばかり聴いています。
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